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「今の価格」を正しく知るために
「そろそろ家を探そうと思っていたのに、また値上がりしている」——最近、そんなため息を耳にすることが増えた。実際、2026年4月の首都圏の不動産市場は、中古マンションも新築戸建ても、揃って高値を更新した。値上がりのニュースを目にするたびに「もう自分には手が届かないのでは」「待てばいつか下がるのでは」と、住まい探しの一歩を踏み出せずにいる人も少なくないはずだ。今回は、アットホームラボ、東日本レインズ、東京カンテイという3つの公表データをもとに、2026年4月の首都圏不動産市況を正確に読み解き、これから住まいを探す人が知っておきたいポイントを整理する。
CHAPITRE I
まず数字から見ていこう。アットホームラボの調査によると、2026年4月の首都圏における中古マンションの1戸あたり平均価格(募集価格)は5,667万円。前月比・前年同月比ともに21カ月連続の上昇となった。しかも、東京都(23区・都下)、神奈川県(横浜市・川崎市・他)、埼玉県(さいたま市・他)、千葉県西部の4エリアでは、2017年1月の集計開始以降で最高額を更新している。さらに12カ月連続で対象8エリア全てが前年同月を上回っており、一部のエリアだけでなく、首都圏全体に価格上昇が広がっていることがわかる。
中古マンション価格は、ここ数年、上りのエスカレーターに乗り続けているようなものだ。踊り場(一時的な足踏み)はあっても、逆方向には動いていない。21カ月というのは、およそ1年9カ月分にあたる。今住まい探しをしている人にとっては、「いつか下がるまで待つ」という選択肢の現実味が、年を追うごとに薄れていることを意味する。
CHAPITRE II
新築戸建ての動きも見逃せない。同じくアットホームラボの調査では、2026年4月の首都圏における新築戸建の平均価格(募集価格)は5,030万円。前月比+1.8%で2カ月連続の上昇、前年同月比では+5.4%と20カ月連続の上昇となり、集計開始以来初めて5,000万円台に到達した。対象8エリア全てで前月比・前年同月比ともに上昇しており、前月比は2カ月連続、前年同月比は13カ月連続。東京都(23区・都下)、神奈川県(横浜市・川崎市・他)、埼玉県(さいたま市・他)、千葉県西部はいずれも2017年1月以降の最高額を更新し、東京都下にいたっては14カ月連続の最高額更新となっている。
東京カンテイの調査でも同様の傾向が確認できる。土地面積50〜100㎡程度の新築小規模一戸建て住宅の首都圏平均価格は、2026年4月時点で前月比+0.5%の5,923万円と3カ月ぶりに上昇。土地面積100〜300㎡を対象とする新築一戸建て住宅(首都圏)は前月比-0.2%の4,932万円とやや足踏みしたが、いずれの調査でも高水準が続いている点は共通している。5,000万円という数字は、これまで「一部の都心エリア」の相場だったものが、首都圏の平均値として定着しつつあることを示している。
CHAPITRE III
なぜ、これほど価格上昇が続くのか。背景の一つとして無視できないのが、地価そのものの上昇だ。国土交通省が2026年3月に公表した「令和8年地価公示」によれば、全国の地価は全用途平均・住宅地・商業地のいずれも5年連続で上昇し、東京圏では全用途平均・住宅地・商業地のすべてで上昇幅が拡大した。
土地の仕入れコストが上がれば、それは新築戸建ての価格に直接反映されるだけでなく、中古マンション市場全体の相場観にも波及する。首都圏の住まいは今、「土地の値上がり」という土台の上に成り立っているといえる。ただし、地価上昇と個々の物件価格の因果関係を数値で厳密に切り分けることは難しく、ここでは公表されている事実として、両者が同じ時期に同じ方向へ動いていることを示すにとどめたい。
CHAPITRE IV
ここまで紹介した5,667万円・5,030万円という数字は、いずれも売り主が「この値段で売りたい」と提示している募集価格(売り希望価格)の平均だ。では、実際に買い手がついた「成約価格」はどうなっているのか。公益財団法人東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が公表した2026年4月度の月例速報によると、首都圏の中古マンション成約価格は5,321万円で前年同月比+5.4%、中古戸建の成約価格は4,177万円で同+9.8%。募集価格ほどの伸び幅ではないものの、成約ベースでも価格は着実に上昇している。
ただし、ここで見逃せない変化がある。中古マンションの成約件数は3,903件で前年同月比-1.2%となり、18カ月ぶりの減少に転じた。一方、在庫件数は45,215件で前年同月比+2.7%と2カ月連続の増加。特に東京都区部では成約件数が前年同月比-9.0%と4カ月連続の減少となっており、「価格は上がっているのに、売れる数は増えていない」という状態が生まれ始めている。中古戸建は逆に成約件数が前年同月比+3.5%と2カ月ぶりに増加しており、住宅の種類によって温度差があることもうかがえる。
東京カンテイの調査でも、首都圏の中古一戸建て住宅価格は前月比+0.6%の4,139万円と2カ月ぶりに上昇しており、複数の統計を突き合わせても「価格上昇」という方向性は一致している。数字を見るときは、「募集価格(売り希望価格)」と「成約価格(実際の取引価格)」のどちらの統計なのかを意識するだけで、市場の実態がぐっとクリアに見えてくる。
CHAPITRE V
エリアによる価格差も大きい。東日本レインズの成約データで見ると、2026年4月の中古マンション成約価格は東京都が7,018万円である一方、神奈川県4,135万円、埼玉県2,913万円、千葉県2,904万円と、都県間で2倍以上の開きがある。とりわけ東京都区部は7,734万円まで上昇し、前年同月比+8.2%。首都圏全体の成約㎡単価は2020年5月から72カ月連続で上昇を続けており、東京都区部に限ってもやはり72カ月連続の上昇となっている。
中古マンション成約価格 都県別(2026年4月・東日本レインズ)
出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「月例速報Market Watch 本体データ編(2026年4月度)」を基に独自作成。成約価格ベース。
中古戸建でも構図は同じだ。東京都の成約価格は6,494万円、神奈川県3,985万円、千葉県2,833万円、埼玉県2,450万円。東京都区部だけを見ると8,207万円で前年同月比+20.1%と、都心の戸建て価格の伸びはマンション以上に大きい。
中古戸建成約価格 都県別(2026年4月・東日本レインズ)
出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「月例速報Market Watch 本体データ編(2026年4月度)」を基に独自作成。成約価格ベース。
「都心か郊外か」「マンションか戸建てか」によって、これほど値動きの体感が変わってくるのが、いまの首都圏不動産市場のリアルだ。エリアを比較する際は、平均値だけでなく、自分が検討している具体的な市区町村の数値まで確認しておきたい。
CHAPITRE VI
価格が上昇局面にあるからこそ、闇雲に動くのではなく、事実に基づいた準備をしておきたい。
中古マンションの成約㎡単価は72カ月連続で上昇しており、過去の推移を見る限り、短期間で大きく下落する兆しは今のところ確認できない。「値下がりを待つ」ことに賭けるより、自分の総予算の上限を先に固め、その範囲で条件に合う物件を探すほうが、現実的な進め方になる。
ポータルサイトに掲載されている価格は、あくまで売り主の希望額だ。東日本レインズの月例速報など、実際の成約価格を公表しているデータにも目を通すと、値引き交渉の余地や、その地域の実勢価格が見えてくる。
今回見てきた通り、東京都区部と郊外では価格差も上昇ペースも大きく異なる。マンションと戸建でも成約件数の増減傾向が逆に出ている月がある。「首都圏の平均」だけで判断せず、検討しているエリア・種別それぞれの最新データを確認する習慣をつけたい。
中古住宅の購入手順は「中古住宅を購入する方法や契約前後の手順を解説」でも詳しく紹介している。
CHAPITRE VII
2026年4月の首都圏不動産市況は、中古マンションが21カ月連続、新築戸建てが初の5,000万円台到達という、どちらも「上昇の記録」を更新する結果となった。一方で、成約件数の伸び悩みや在庫の増加など、価格の勢いとは裏腹に、取引の温度感には変化の兆しも見え始めている。募集価格と成約価格、エリアと住宅種別ごとの違いを踏まえたうえで、今の自分に合った住まい探しのタイミングを見極めていきたい。
CHAPITRE VIII
Q.中古マンションの「平均価格」と「成約価格」は何が違うのですか?
「平均価格」は売り主が市場に提示している募集価格(売り希望価格)の平均で、アットホームラボなどが集計しています。「成約価格」は実際に売買契約が成立した価格の平均で、公益財団法人東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が集計しています。一般に募集価格は成約価格よりやや高めに出る傾向があり、両方を見比べることで市場の実態がより正確に把握できます。
Q.新築戸建の価格が5,000万円を超えたのはなぜですか?
アットホームラボの調査によれば、2026年4月の首都圏新築戸建平均価格(募集価格)は前月比+1.8%、前年同月比+5.4%となり、初めて5,000万円台に到達しました。背景には、国土交通省「令和8年地価公示」で示された地価の継続的な上昇があり、土地の仕入れコストの上昇が販売価格に影響していると考えられますが、両者の因果関係を厳密に数値化することはできません。
Q.中古マンションの成約件数が減っているのはなぜですか?
東日本レインズの月例速報によると、2026年4月の首都圏中古マンション成約件数は前年同月比-1.2%と、18カ月ぶりに減少しました。同時に在庫件数は同+2.7%と増加しています。価格上昇によって購入を見送る動きや、様子見をする買い手が増えている可能性が考えられますが、要因を断定する公表データはなく、不明です。
Q.今後も不動産価格は上がり続けますか?
過去の推移を見る限り、中古マンションの成約㎡単価は72カ月連続で上昇するなど、長期的な上昇基調が続いています。ただし、将来の価格動向を正確に予測することはできません。最新の公表データを継続的に確認しながら、ご自身の状況に合わせて判断することをおすすめします。
Q.東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県で価格差はどれくらいありますか?
2026年4月の東日本レインズ成約データによると、中古マンションは東京都7,018万円に対し神奈川県4,135万円、埼玉県2,913万円、千葉県2,904万円。中古戸建は東京都6,494万円に対し神奈川県3,985万円、千葉県2,833万円、埼玉県2,450万円と、都県によって2倍以上の価格差があります。
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