2026年6月 首都圏不動産市況レポート
一戸建ては続伸、中古市場に広がる「ねじれ」
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価格も、在庫も。二つの市場が、違う顔を見せ始めた。
「そろそろ家のことを考えようか」と情報を集め始めたら、思っていたより価格が上がっていて驚いた——。土地探しや住み替えの相談窓口では、そんな声を毎月のように耳にする。テレビや新聞では「不動産価格上昇」という見出しが繰り返される一方で、自分の暮らすエリアで実際に何が起きているのかは分かりにくく、「今が動くタイミングなのか、それとももう少し待つべきなのか」を判断する材料がないまま、時間だけが過ぎていく人は少なくない。本記事では、東京カンテイと東日本レインズが2026年7月に公表した最新統計から、2026年6月の首都圏を中心とした不動産市況を整理する。新築・中古一戸建ての価格動向から、中古マンションとの対比、エリア別の傾向まで、数字の背景にある「今、何が起きているのか」を分かりやすく解説していく。
- 首都圏の新築一戸建て平均価格は5,017万円(東京カンテイ調べ、2026年6月)。前月比は小幅下落したが、前年同月比では+6.4%と高値圏を維持。東京都は6,394万円で前月比+0.6%、前年同月比+11.5%と続伸している。
- 中古一戸建ても値上がり基調。首都圏平均4,241万円(前年同月比+5.0%)、東京都は7,135万円で7,000万円台を維持している。
- 東日本レインズの成約統計では、中古マンションの成約件数が3か月連続で減少し在庫が4か月連続で増加した一方、中古戸建ては成約件数が3か月連続で増加し在庫が5か月連続で減少するという、対照的な動きが見られる。
- エリア別では埼玉県・千葉県の新築一戸建てや小規模住宅で過去最高値の更新が相次ぐ一方、近畿圏の一部エリアでは下落も見られ、地域差が広がっている。
目次
CHAPITRE I
2026年6月の不動産市況を数字で押さえる
本記事で扱うデータには、性格の異なる2種類の統計が含まれる。ひとつは東京カンテイが集計する「売り出し価格(募集価格)」で、不動産情報サイトなどに掲載された物件情報の平均価格を毎月まとめたものだ。もうひとつは東日本レインズが集計する「成約価格」で、レインズに登録された物件のうち実際に売買契約が成立したものだけを対象にしている。売り出し価格は交渉前の希望値、成約価格は交渉後の実勢値という違いがあるため、この二つをあわせて見ることで、市場の実態により近づくことができる。
まず結論から確認しておくと、2026年6月は「一戸建ての価格上昇」と「中古マンションと中古戸建ての明暗」という、二つの動きが同時に進んだ月だった。次章から、新築一戸建て、中古一戸建て、そしてレインズの成約統計という順に、それぞれの数字を具体的に見ていく。
不動産市況は、天気予報のように「今日の一言」だけでは語れない。売り出し価格という「体感温度」と、成約価格という「実測気温」の両方を見て、はじめて「今どんな気候なのか」が分かる。本記事では、その両方の"温度計"を使って2026年6月の市況を読み解いていく。
CHAPITRE II
新築一戸建て:東京都は続伸、埼玉県は最高値を更新
東京カンテイの調査によると、2026年6月の首都圏における新築一戸建て住宅の平均価格は5,017万円。前月比では-0.5%とわずかに下落したものの、前年同月比では+6.4%と、依然として高値圏を維持している。
新築一戸建て 都県別平均価格(万円)2026年6月
出典:東京カンテイ「新築一戸建て住宅平均価格」(2026年7月9日公表)を基に独自作成。
都県別に見ると、東京都は6,394万円(前月比+0.6%、前年同月比+11.5%)と続伸し、東京23区に限れば11,885万円(前月比+3.5%)に達している。神奈川県は5,310万円(前月比-3.7%)とやや調整したが、千葉県は4,194万円(前月比+2.0%)、埼玉県は4,235万円(前月比+4.4%)とそれぞれ上昇し、なかでも埼玉県は2014年4月の集計開始以来の最高値を更新した。
また、延床面積50〜100㎡台の新築小規模一戸建てに限ると、首都圏平均は6,203万円(前年同月比+11.7%)とさらに高い伸びを示している。東京都は8,067万円で8,000万円台を維持し、千葉県は4,905万円と、こちらも2014年4月の集計開始以来の最高値を記録した。
この値動きは、混雑した山道の「渋滞の伝わり方」に似ている。先頭を歩く東京都心の価格が押し上げられ続けると、その勢いは少し遅れて神奈川・千葉・埼玉にも波及していく。埼玉県の最高値更新は、まさにその"渋滞の後方"にまで上昇圧力が届き始めたことの表れといえる。

CHAPITRE III
中古一戸建て:東京都は7,000万円台を維持、じわり値上がり継続
中古一戸建てについても、東京カンテイの調査では値上がり基調が続いている。2026年6月の首都圏平均価格は4,241万円で、前月比は-0.3%とほぼ横ばいだったが、前年同月比では+5.0%の上昇となった。
中古一戸建て 都県別平均価格(万円)2026年6月
出典:東京カンテイ「中古一戸建て住宅平均価格」(2026年7月9日公表)を基に独自作成。
都県別では、東京都が7,135万円(前月比-5.9%、前年同月比+10.5%)と、前月からは調整したものの7,000万円台を維持し、東京23区では13,554万円(前月比-1.4%)だった。神奈川県は4,340万円(前月比+2.3%)、千葉県は3,107万円(前月比+3.0%、3か月連続上昇)、埼玉県は2,902万円(前月比+4.9%)と、いずれも上昇している。
新築ほど値動きが荒くないのが中古の特徴だが、それでも前年同月比では首都圏全体で+5.0%という水準が続いている。中古一戸建ては「価格が落ち着いている選択肢」というイメージを持たれがちだが、実際には新築とほぼ同じ方向、同じペースで値上がりが進んでいる点は押さえておきたい。
CHAPITRE IV
レインズ最新データが映す「マンションと戸建てのねじれ」
東日本レインズが2026年7月10日に公表した「月例速報Market Watch 2026年6月度」では、首都圏の中古マンションと中古戸建て住宅の間で、対照的な動きが浮かび上がっている。
整理すると、中古マンションは在庫が積み上がる一方で成約のペースが鈍り、価格の伸びも足踏みしている。対して中古戸建ては、在庫が減り続けているにもかかわらず成約件数は増え、価格も6か月連続で上昇している。同じ「中古住宅」という括りでも、いま起きていることはまったく逆方向だ。
この現象は、二つの水槽をイメージすると分かりやすい。中古マンションという水槽は蛇口(新規登録)が開きっぱなしで水位(在庫)が上がり続け、価格の勢いはやや鈍っている。一方、中古戸建てという水槽は排水(成約)が続いて水位が下がり続け、品薄感が価格を押し上げている。どちらの水槽に興味があるかによって、今取るべき行動は変わってくる。
CHAPITRE V
エリア別の動きと、これから動く人が意識したい3つのこと
レインズのエリア別データを見ると、千葉県の伸びが際立つ。2026年6月の中古マンション成約は、千葉県で件数が前年同月比+19.0%、成約㎡単価が+20.5%、成約価格が+20.8%と、首都圏の中でも突出した上昇を見せた。埼玉県も件数+2.9%、㎡単価+6.1%、成約価格+7.0%と堅調で、神奈川県も件数+7.0%、㎡単価+7.2%、成約価格+5.5%と上昇が続いている。
中古マンション成約㎡単価 エリア別(万円/㎡)2026年6月
出典:東日本レインズ「月例速報Market Watch 2026年6月度」(2026年7月10日公表)を基に独自作成。
一方、東京カンテイのデータでは、近畿圏の一部で価格の下落も見られた。兵庫県の新築一戸建ては前月比-3.5%、堺市の中古一戸建ては前月比-4.9%、大阪市の中古一戸建てにいたっては前月比-18.2%と大きく調整している。首都圏の上昇基調とは対照的に、エリアによって値動きの方向がはっきり分かれているのが2026年6月の特徴だ。
こうした「上がるエリア」と「調整するエリア」が混在する局面で、これから住まいを探す人が意識しておきたいことを3つ挙げておく。
「売り出し価格」と「成約価格」の両方を確認する癖をつける
ポータルサイトに載っている価格は、あくまで売り主側の希望値だ。東京カンテイの募集価格と東日本レインズの成約価格を見比べる習慣を持つと、「この価格帯なら現実的に交渉が成立しやすい」という感覚がつかみやすくなる。
候補エリアを1つに絞らず、隣接エリアの動きも見る
東京都心にこだわらず、埼玉県・千葉県のように上昇率が高いエリアや、逆に価格が落ち着いているエリアまで視野を広げると、同じ予算でも選べる選択肢が大きく変わる。エリアをまたいだ比較は、担当者に相談する際の判断材料にもなる。
在庫が減っているジャンルは、動くなら早めの判断を
中古戸建てのように在庫が5か月連続で減少しているジャンルは、条件に合う物件が見つかったときの決断のスピードが結果を左右しやすい。逆に中古マンションのように在庫が増えているジャンルでは、比較検討にじっくり時間をかける余地がある。
土地探しの具体的な進め方は「注文住宅用の土地探しの方法や注意点、土地の選び方をチェック」でも解説している。
CHAPITRE VI
まとめ
2026年6月の不動産市況は、新築・中古一戸建てが前年同月比で上昇を続ける一方、レインズの成約統計では中古マンションと中古戸建てで在庫と成約件数の動きが正反対という、二重の「ねじれ」を見せる月だった。埼玉県・千葉県での最高値更新は、上昇の波が郊外にまで及んでいることを示しているし、近畿圏の一部エリアの下落は、全国一律ではなく地域ごとに事情が異なることを教えてくれる。数字は毎月動く。だからこそ、一度の情報収集で判断を終わらせず、売り出し価格と成約価格の両方を継続してチェックしながら、ご自身の資金計画やライフイベントに合ったタイミングを見極めてほしい。迷っている時間も、動き続ける市場では立派なコストになる。まずは今の相場感を、専門家と一緒に確認するところから始めてみよう。
CHAPITRE VII
よくある質問
Q.東京カンテイと東日本レインズのデータは何が違うのですか?
東京カンテイの価格は不動産情報サイトなどに掲載された「売り出し価格(募集価格)」の平均を集計したものです。一方、東日本レインズの成約価格は、レインズに登録された物件のうち実際に売買契約が成立した「成約価格」の平均です。売り出し価格は交渉前の希望値、成約価格は交渉後の実勢値という違いがあるため、両方をあわせて見ることで市場の実態に近づけます。
Q.2026年6月は住宅を買うタイミングとして良いのでしょうか?
一概には言えません。新築・中古一戸建てとも前年同月比では上昇が続いており、埼玉県や千葉県では過去最高値の更新も見られます。一方で中古戸建ての在庫は5か月連続で減少しているため、希望条件に合う物件が見つかった場合は早めの判断が有利になる可能性があります。ご自身の資金計画やライフイベントに合わせて個別に検討することをおすすめします。
Q.中古マンションの在庫が増えているのはなぜですか?
東日本レインズの統計では、首都圏の中古マンション在庫は2026年6月時点で4か月連続で増加し、成約件数は3か月連続で減少しています。本記事のデータからは在庫増加の具体的な要因までは特定できませんが、成約価格の上昇ペースが鈍化していることから、売り出し件数の増加に対して成約のペースが追いついていない状況がうかがえます。
Q.東京都と埼玉県・千葉県では、どちらの値上がりが大きいですか?
上昇率で見ると、埼玉県・千葉県の伸びが目立ちます。2026年6月の新築一戸建て平均価格は、埼玉県が前月比+4.4%で2014年4月の集計開始以来の最高値を更新しました。東京都は価格水準そのものが高く(6,394万円)、前年同月比+11.5%と高い伸びを維持していますが、上昇のペースでは郊外エリアにも勢いが波及しています。
Q.このレポートのデータはどこで確認できますか?
東京カンテイの新築一戸建て・中古一戸建て・新築小規模一戸建てに関する価格レポート、および東日本レインズの月例速報Market Watch(2026年6月度)を基にしています。詳細は本記事末尾の出典・参照元リンクからご確認いただけます。
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東京カンテイ「中古一戸建て住宅平均価格」(2026年7月9日公表) https://www.kantei.ne.jp/report/
東京カンテイ「新築小規模一戸建て住宅平均価格」(2026年7月9日公表) https://www.kantei.ne.jp/report/
東日本レインズ「月例速報Market Watch 2026年6月度 サマリーレポート」(2026年7月10日公表) https://www.reins.or.jp/library/#
東日本レインズ「月例速報Market Watch 2026(令和8)年6月度」(詳細データ、2026年7月10日公表) https://www.reins.or.jp/library/#
本記事の統計数値は、東京カンテイおよび東日本レインズが公表した2026年6月分データ(いずれも2026年7月公表、本記事執筆時点で入手可能な最新値)に基づきます。
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(公開日:2026年7月13日)