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【2026年最新】誰もが関係する「相続」について学ぼう|相続登記の義務化・相続税・不動産売却まで

作成者: Admin|3/10/22, 3:00 PM

【2026年最新】誰もが関係する「相続」について学ぼう|相続登記の義務化・相続税・不動産売却まで

情報更新日:2026年8月7日
この記事でわかること
  • 相続税がかかるのは今や「10人に1人」。東京都は20.0%、東京23区では21.6%と全国平均の約2倍(令和6年分・国税庁)
  • 相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」。これを超えなければ相続税はかからない
  • 2024年4月1日から相続登記が義務化。知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料。過去の相続も2027年3月31日が期限
  • 相続不動産の売却で使える税優遇は3つ。取得費加算(3年10か月以内)/空き家の3,000万円控除(2027年12月31日まで)/小規模宅地等の特例(330㎡まで80%減)
  • 「すぐ売れば固定資産税がかからない」は正確ではない。固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に課税される(本文で詳しく解説)
  • 使い道のない土地は相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらえる場合がある(2026年2月末までに累計2,542件が帰属)

1. 結論:2026年の相続で押さえるべき5つのこと

家族が亡くなることは、あまり考えたくないことです。しかし、親族が亡くなって初めて慌てて調べ始め、よく理解できないまま手続きを進めてしまうと、本来使えたはずの税の優遇を逃したり、期限を過ぎて過料を科されたりすることがあります。ここ数年で相続のルールは大きく変わりました。まず結論から整理します。

2026年時点で押さえるべき5つのポイント
  1. 相続税は「他人事」ではなくなった— 全国の課税割合は令和6年分で10.4%(過去最高)。東京都は20.0%、東京23区内は21.6%。首都圏に不動産を持っていれば、まず課税されるかどうかを確かめるところから始まります。
  2. 相続登記は「義務」になった— 2024年4月1日以降、知った日から3年以内。放置していた過去の相続も2027年3月31日が期限です。
  3. 不動産の売却には「期限つきの優遇」がある— 取得費加算は3年10か月、空き家の3,000万円控除は相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。動き出しが遅れると使えません。
  4. 空き家の放置は税負担を増やす— 管理不全空家に勧告されると住宅用地特例が外れ、土地の固定資産税は最大でおよそ6倍になります。
  5. 生前の贈与も相続に取り込まれる範囲が広がった— 暦年贈与の持ち戻し期間が3年から7年へ段階的に延長されました(令和6年1月1日以後の贈与から)。

2. 相続とは? 基本の定義と手続きの期限

相続とは、亡くなった方(被相続人)が所有していた財産や権利義務を、配偶者や子などの一定の身分関係にある人(相続人)が受け継ぐことをいいます。相続は被相続人が亡くなった日に自動的に開始します。手続きを始めた日ではありません。

受け継ぐのは、預貯金・不動産・有価証券といったプラスの財産だけではありません。借入金や連帯保証債務といったマイナスの財産も含まれます。プラスよりマイナスが大きい場合は、家庭裁判所での相続放棄や限定承認という選択肢がありますが、いずれも「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」という短い期限があります。

相続人になる人と法定相続分

配偶者は常に相続人になります。それ以外の相続人には順位があり、上位の順位の人がいる場合、下位の順位の人は相続人になりません。

相続人の組み合わせ 配偶者の法定相続分 配偶者以外の法定相続分
配偶者と子(第1順位) 2分の1 2分の1(子の人数で等分)
配偶者と直系尊属(第2順位・父母など) 3分の2 3分の1
配偶者と兄弟姉妹(第3順位) 4分の3 4分の1
配偶者のみ 全部

出典:民法第900条(法定相続分)。法定相続分はあくまで目安であり、遺言や相続人全員の合意による遺産分割協議が優先されます。

相続手続きの期限一覧(この表がいちばん実務で効きます)

期限 やること 過ぎるとどうなるか
3か月 相続放棄・限定承認の申述(家庭裁判所) 原則として単純承認とみなされ、借金も含めてすべて相続する
4か月 被相続人の準確定申告 延滞税・加算税の対象
10か月 相続税の申告・納付 無申告加算税・延滞税。小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減が使えなくなるおそれ
1年 遺留分侵害額の請求 時効により請求できなくなる
3年 相続登記の申請(2024年4月1日から義務) 正当な理由がなければ10万円以下の過料
3年を経過する日の属する年の12月31日 空き家の3,000万円特別控除を使う売却 控除が使えず、譲渡所得税が大幅に増える
3年10か月 取得費加算の特例を使う売却 納めた相続税を取得費に上乗せできなくなる

起算日は制度ごとに異なります(相続の開始を知った日/相続開始の日の翌日など)。詳細は本文各章と出典をご確認ください。

3. 相続税は「10人に1人」の時代へ|東京23区は5人に1人

「うちは相続税なんて関係ない」と考えている方は多いのですが、その前提は平成27年(2015年)の基礎控除引き下げで大きく変わりました。

国税庁が2025年12月に公表した「令和6年分 相続税の申告事績の概要」によると、令和6年に亡くなった方は1,605,378人。このうち相続税の申告書の提出に係る被相続人は166,730人で、課税割合は10.4%。前年から0.5ポイント上昇し、統計が公表されている中で過去最高を更新しました。

10.4%課税割合(全国)
前年比+0.5pt・過去最高
166,730人相続税の申告に係る
被相続人数(前年比107.1%)
23兆3,846億円課税価格の総額
(前年比108.1%)
3兆2,446億円申告税額の総額
(前年比108.0%)

出典:国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(2025年12月公表)。課税価格・申告税額はいずれも基礎控除が引き下げられた平成27年分以降で最高。

図1:相続税の課税割合の推移(全国・抜粋)
単位:%(亡くなった方のうち相続税の課税対象となった方の割合)
4.4%
 
8.0%
 
9.9%
 
10.4%
 
平成26年
(2014)
平成27年
(2015)
令和5年
(2023)
令和6年
(2024)
基礎控除引き下げ前引き下げ後最新値
【注記】平成27年1月1日以後の相続から基礎控除が引き下げられ、課税割合は4.4%から8.0%へほぼ倍増しました。棒の高さは最大値10.4%を200pxとした相対値です。中間年(平成28年〜令和4年)は本図では省略しています。
【出典】国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(2025年12月公表)、同「平成27年分の相続税の申告状況について」

東京・一都三県では課税割合がさらに高い

この10.4%は全国平均です。地価の高い首都圏では、数字はまったく違います。

図2:相続税の課税割合の地域差(令和6年分)
単位:% バーの長さは最大値21.6%を100%とした相対値
全国平均
 
10.4%
東京都
都道府県別で最高
 
20.0%
東京23区内
前年20.3%
 
21.6%
全国東京都東京23区
【注記】東京23区内は前年から1.3ポイント上昇。全国平均の約2倍の水準です。
【出典】国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」、東京国税局「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(2025年12月公表)

東京23区内では、亡くなった方のおよそ5人に1人が相続税の課税対象になっています。これは全国平均の約2倍です。加えて、令和6年分の課税価格の総額は23兆3,846億円(前年比108.1%)、申告税額の総額は3兆2,446億円(同108.0%)と、いずれも基礎控除が引き下げられた平成27年分以降で最高となりました。地価の上昇が相続財産の評価額を押し上げていることが背景にあります。

専門家の視点
首都圏で相続財産の中心になるのは、多くの場合「自宅の土地」です。現金は増えていなくても、土地の路線価が上がれば相続税の課税価格は上がります。2026年の公示地価では東京圏の住宅地が前年比4.5%上昇しました(後述)。「前回の相続では税金がかからなかったから今回も大丈夫」という判断は、東京・一都三県では特に危険です。

4. 相続税はいくらかかる? 基礎控除と税率の仕組み

相続税の計算は、まず基礎控除を差し引くところから始まります。

相続税の基礎控除額
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
遺産の総額がこの金額以下であれば相続税はかからず、原則として申告も不要です。

平成27年(2015年)1月1日以後の相続から、この計算式になりました。それ以前は「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」でしたので、控除される金額は約40%引き下げられたことになります。これが課税割合が4.4%から8.0%へ倍増した直接の原因です。

図3:相続税の基礎控除額 — 平成26年以前と平成27年以降の比較
単位:万円 バーの長さは最大値9,000万円を100%とした相対値
法定相続人1人
改正前
 
6,000
法定相続人1人
改正後
 
3,600
法定相続人2人
改正前
 
7,000
法定相続人2人
改正後
 
4,200
法定相続人3人
改正前
 
8,000
法定相続人3人
改正後
 
4,800
法定相続人4人
改正前
 
9,000
法定相続人4人
改正後
 
5,400
平成26年12月31日以前平成27年1月1日以後
【注記】改正前は「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」、改正後(平成27年1月1日以後の相続)は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」。どの人数でも控除額は一律40%減となります。
【出典】国税庁 タックスアンサー No.4152「相続税の計算」

相続税の税率(速算表)

基礎控除を超えた部分は、法定相続分に応じて按分したうえで、以下の税率が適用されます。最高税率は55%ですが、これは各人の法定相続分に応ずる取得金額が6億円を超える部分に適用される税率であり、遺産全体にいきなり55%がかかるわけではありません。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

出典:国税庁 タックスアンサー No.4155「相続税の税率」(平成27年1月1日以後の相続に適用)

なお、配偶者には「配偶者の税額軽減」があり、配偶者が取得した遺産のうち1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額までは相続税がかかりません。ただし、この適用を受けるには相続税の申告が必要です(納税額がゼロでも申告書の提出が要件)。

 

5. 2024年からの大改正|相続登記の義務化とは?

相続登記の義務化とは、相続によって不動産を取得した人に対し、期限内に名義変更(所有権移転登記)の申請を法律で義務づける制度です。2024年4月1日から施行されました。所有者不明土地が全国で増え続け、公共事業や災害復旧の妨げになっていることが背景にあります。

項目 内容
施行日 2024年(令和6年)4月1日
申請期限 「相続の開始があったこと」および「その不動産の所有権を取得したこと」を知った日から3年以内
遺産分割が成立した場合 遺産分割の日から3年以内に、その内容に沿った登記を申請
罰則 正当な理由なく申請を怠った場合、10万円以下の過料(行政上の秩序罰。刑事罰ではなく前科はつきません)
過去の相続への適用 施行日より前に発生した相続にも遡って適用。この場合の期限は2027年(令和9年)3月31日
間に合わないときの救済 相続人申告登記(2024年4月開始)。相続人であることを法務局に申し出れば義務を履行したものとみなされます。ただし正式な相続登記の代わりにはならず、遺産分割成立後に別途登記が必要です
登録免許税 原則、固定資産税評価額の0.4%。ただし評価額100万円以下の土地については、令和9年(2027年)3月31日まで免税(租税特別措置法第84条の2の2)

出典:法務省「相続登記の申請義務化について」、法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」

間に合わないときの救済策と、費用を抑える制度があります
遺産分割がまとまらず期限に間に合わない場合でも、相続人申告登記(法務局へ「自分が相続人である」と申し出る簡易な手続き)を行えば、申請義務を履行したものとみなされ過料を回避できます。また、固定資産税評価額100万円以下の土地は、令和9年(2027年)3月31日まで相続登記の登録免許税が免税です。「手続きが大変そう」「費用がかかりそう」で止まっている方は、まず法務局か司法書士にご相談ください。
要注意:祖父母・曾祖父母名義のままの不動産
東京23区や一都三県の郊外では、何十年も名義を変えていない土地が今も残っています。こうした「数次相続」の物件も義務化の対象で、期限は2027年3月31日です。相続人が10人、20人と枝分かれしているケースでは、戸籍の収集だけで数か月かかることも珍しくありません。残り期間を考えると、今すぐ着手すべき段階に来ています。

6. 使い道のない土地はどうする? 相続土地国庫帰属制度

相続土地国庫帰属制度とは、相続または遺贈によって取得した土地を、一定の要件と負担金の納付を条件に、国に引き取ってもらえる制度です。2023年(令和5年)4月27日に始まりました。「相続したものの管理できない」「売ろうにも買い手がつかない」という土地の受け皿として創設されました。

図4:相続土地国庫帰属制度の運用状況(累計・2026年2月28日時点)
単位:件 バーの長さは申請件数5,140件を100%とした相対値
申請件数
 
5,140
国庫帰属件数
 
2,542
申請実際に国庫へ帰属
【自由住宅NAVI 算出】申請件数に対する帰属件数の割合は約49.5%(2,542 ÷ 5,140)。申請しても2件に1件は帰属に至っていない計算になります(審査中・取下げ・却下を含む)。
【注記】制度開始(2023年4月27日)からの累計。
【出典】法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」および同制度の運用状況統計(2026年2月28日時点)

申請できない土地・負担金

この制度は「どんな土地でも国が引き取ってくれる」ものではありません。建物が建っている土地、担保権や使用収益権が設定されている土地、境界が明らかでない土地、通路など他人による使用が予定されている土地などは申請できません(却下事由)。また、崖地や管理に過分な費用がかかる土地なども不承認事由に該当します。

承認された場合には、10年分の土地管理費用相当額を「負担金」として納付する必要があります。金額は土地の所在地・地目・面積に応じて個別に算出されます。負担金は、承認通知が到達した日の翌日から30日以内に納付しなければ、承認の効力が失われます。

専門家の視点:まず「売れるかどうか」を確かめる
負担金と審査手数料を支払って国に引き取ってもらうより、たとえ低い価格でも売却できたほうが手元に現金が残ります。一都三県、特に東京23区や鉄道沿線の土地であれば、まず市場での売却可能性を確認するのが順序です。国庫帰属制度は「売れなかった場合の最後の選択肢」と位置づけるのが実務的です。建物付きの土地は申請自体ができないため、解体費用(木造30坪で150万〜250万円程度が一つの目安)を投じてまで申請すべきかも含めて検討が必要です。

7. 相続した不動産を売るときに使える3つの税優遇

相続した不動産を売却して利益(譲渡益)が出た場合には、譲渡所得税・住民税がかかります。ただし、相続に関しては期限つきの優遇制度が用意されています。代表的な3つを整理します。

制度 効果 期限 主な要件
取得費加算の特例
(相続財産を譲渡した場合の取得費の特例)
納めた相続税のうち、その不動産に対応する部分を取得費に加算できる。譲渡益が圧縮され、譲渡所得税が減る 相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで=実質3年10か月 相続・遺贈で財産を取得し、相続税を納めていること
空き家の3,000万円特別控除
(被相続人の居住用財産を売ったときの特例)
譲渡所得から最大3,000万円を控除。相続人が3人以上の場合は1人あたり2,000万円(令和6年1月1日以後の譲渡) 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ令和9年(2027年)12月31日まで 昭和56年5月31日以前に建築された家屋/被相続人が一人暮らしだったこと/耐震改修または除却をして売る等
小規模宅地等の特例 相続税の評価額を減額。特定居住用宅地等は330㎡まで80%減 相続税の申告期限(10か月)までに申告・選択 配偶者は無条件。同居親族・「家なき子」は保有継続要件などあり

出典:国税庁 タックスアンサー No.3267「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」、No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」、No.4124「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例」、国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置」

【本記事の訂正】取得費加算の期限は「3年」ではなく「3年10か月」です
本記事の従来版では、取得費加算の特例について「相続開始の翌日から3年以内に譲渡が完了していないといけません」と記載していました。正しくは「相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月)の翌日以後3年を経過する日まで」であり、実質的には相続開始から3年10か月です。また、制度の正式名称は「相続税の取得加算」ではなく「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(取得費加算の特例)」です。誤りをお詫びし、訂正いたします。

売却までにかかる時間から逆算する

3年10か月と聞くと十分な余裕があるように感じますが、実際には次のような時間がかかります。

工程 目安期間 備考
相続人の確定・戸籍収集 1〜3か月 相続人が多いほど長期化
遺産分割協議 1〜6か月以上 意見が割れると年単位になることも
相続登記(名義変更) 2週間〜1か月 登記を済ませないと売却できません
売却活動(媒介・内見・交渉) 3〜6か月 買取なら短縮可能
契約〜引渡し 1〜2か月 住宅ローン利用の買主なら審査期間が必要

※目安期間は一般的な取引の流れをもとにした自由住宅NAVIの整理です。物件・相続人の状況により変動します。

合計すると、順調に進んでも1年前後、遺産分割が難航すれば2年以上かかります。3年10か月という期限は、決して長くありません。特例を使うつもりなら、相続が発生した段階で不動産の扱いを決めておくのが安全です。

8. 「すぐ売れば固定資産税がかからない」は本当か?

相続した不動産の売却を勧める記事でしばしば見かける「早く売れば固定資産税がかからない」という説明は、そのままでは正確ではありません。本記事の従来版にも同趣旨の記述がありましたので、ここで正しく整理します。

固定資産税・都市計画税の課税ルール
固定資産税および都市計画税は、毎年1月1日(賦課期日)時点で固定資産課税台帳に所有者として登録されている人に対して、その年度分の全額が課税されます。年の途中で売却しても、その年度の納税義務者は1月1日時点の所有者のままです。

実務上は、売買契約において引渡日を基準に日割りで精算するのが一般的です。ただしこれは売主と買主の間の取り決めであって、自治体に対する納税義務が移転するわけではありません。

とはいえ、早期売却に意味がないわけではありません。正しくはこう言えます。

早く売ることの本当のメリット
  • 翌年以降の固定資産税・都市計画税を止められる——1月1日を1回またぐごとに1年分の税負担が積み上がります
  • 管理コストと管理責任から解放される——草木の手入れ、通水、火災保険、遠方であれば交通費。空き家管理サービスを使えば月5,000円〜1万円程度が継続的にかかります
  • 建物の劣化による資産価値の低下を止められる——人が住まない家は換気されず、傷みが早く進みます
  • 共有状態の長期化を避けられる——共有者の誰かに次の相続が発生すると、権利関係はさらに複雑になります
  • 税優遇の期限に間に合う——前章のとおり、取得費加算は3年10か月、空き家控除は3年を経過する日の属する年の12月31日が期限です

相続した土地の評価額によっては、固定資産税と都市計画税を合わせて毎年数十万円の負担になることもあります。使う予定がないのであれば、その支出は毎年確実に資産を目減りさせていきます。

 

9. 空き家を放置するリスク|管理不全空家と固定資産税6倍

総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」(2024年公表)によると、全国の空き家は900万戸、空き家率は13.8%と、いずれも過去最高を記録しました。1993年の448万戸から30年で倍増しています。このうち賃貸・売却用および二次的住宅を除く空き家(=いわゆる放置空き家)は385万戸で、総住宅数の5.9%を占めます。

図5:全国の空き家数の推移
単位:万戸
448
 
849
 
900
 
1993年
(平成5)
2018年
(平成30)
2023年
(令和5)
30年前前回調査最新調査
【注記】棒の高さは最大値900万戸を180pxとした相対値です。2023年の空き家率は13.8%(過去最高)。このうち賃貸・売却用および二次的住宅を除く空き家は385万戸(総住宅数の5.9%)。
【出典】総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」(確報集計・2024年9月公表)

2023年12月施行の改正空家法で何が変わったか

管理不全空家等とは、そのまま放置すれば「特定空家等」になるおそれのある状態の空き家をいいます。2023年12月13日に施行された改正空家等対策特別措置法で新設された区分です。従来は倒壊の危険があるレベルの「特定空家等」にならなければ行政の措置対象になりませんでしたが、その手前の段階で市区町村が指導・勧告できるようになりました。

区分 状態 勧告を受けた場合の税負担
通常の住宅用地 建物が建っており、適切に管理されている 住宅用地の特例が適用
(小規模住宅用地200㎡以下は課税標準を6分の1に、一般住宅用地は3分の1に)
管理不全空家等
(2023年12月新設)
放置すれば特定空家になるおそれ(窓が割れている、雑草の繁茂、屋根材の脱落など) 指導後に改善が見られず勧告を受けると、住宅用地の特例が適用されなくなる
特定空家等 倒壊等のおそれ、著しく衛生上有害、著しく景観を損なう等 勧告で特例が外れる。さらに命令・行政代執行(解体費用は所有者負担)の対象

出典:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」(令和5年12月13日施行)、地方税法第349条の3の2(住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例)

住宅用地の特例が外れると、土地の固定資産税は本来の課税標準に戻り、最大でおよそ6倍になります。正確には「増税される」のではなく「これまで受けていた軽減が受けられなくなる」という仕組みです。建物を解体して更地にした場合も同様に特例は外れますので、「解体すれば税金が安くなる」わけではない点にも注意が必要です。

10. 生前にできる対策|生前贈与の7年加算と相続時精算課税

相続対策は、亡くなってからでは選択肢が限られます。生前贈与は代表的な手段ですが、こちらも2024年に大きく変わりました。

暦年贈与の「持ち戻し」が3年から7年へ

生前贈与加算(持ち戻し)とは、相続開始前の一定期間に被相続人から受けた贈与を、相続財産に加算して相続税を計算する仕組みです。令和6年(2024年)1月1日以後の贈与から、この期間が3年から7年へ段階的に延長されました。

項目 内容
対象 令和6年1月1日以後の贈与
加算期間 相続開始前7年以内(改正前は3年以内)
延長された4年分の緩和 相続開始前3年超7年以内の贈与については、その合計額から100万円を控除した残額を加算
経過措置 令和8年12月31日までに相続が開始した場合は従来どおり3年以内のみ。令和13年(2031年)1月1日以後の相続で、完全に7年分が加算対象になります
注意点 年110万円の贈与税の基礎控除以下であっても、暦年課税では加算の対象になります

出典:国税庁「令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」、同 タックスアンサー No.4161「贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」

相続時精算課税に年110万円の基礎控除が新設

一方で、相続時精算課税制度には年110万円の基礎控除が新設されました(令和6年1月1日以後の贈与)。この基礎控除の範囲内(年110万円以下)の贈与は、相続税の課税価格に加算されません。暦年課税では110万円以下でも持ち戻しの対象になるのと対照的です。

専門家の視点
7年加算の導入により、「高齢になってから慌てて暦年贈与を始める」という対策の効き目は大きく落ちました。一方で、相続時精算課税を選択したうえで年110万円以内の贈与を続ける方法は、加算対象外という点で有利になりました。ただし相続時精算課税は一度選択すると同じ贈与者からの贈与について暦年課税に戻せません。どちらが有利かは財産の構成・相続人の数・想定される相続開始時期によって変わります。税理士への相談を強くおすすめします。

2026年時点で押さえておきたい直近の動き

令和8年度(2026年度)税制改正大綱では、資産課税について次の方向性が示されています。今後の法令化の内容は確定していないため、あくまで検討段階の情報として扱ってください。

  • 貸付用不動産の評価方法の見直し——令和9年1月1日以後に取得した貸付用不動産について、相続開始前5年以内の相続・遺贈・贈与に限り、原則として通常の取引価格を基礎とする評価に見直す方針。いわゆる「タワマン節税」を含む不動産を用いた節税策への規制強化と位置づけられています。
  • 教育資金の一括贈与の非課税措置は終了——適用期限(令和8年3月31日)をもって延長されない方針です。

出典:令和8年度税制改正大綱(資産課税)。実際の適用は法律の成立・施行が前提です。

11. 一都三県で相続不動産を売るときのポイント

相続対策としての不動産の扱いは、地域によって最適解が異なります。首都圏では地価が上昇局面にあることが、判断に大きく影響します。

図6:2026年 公示地価の対前年変動率
単位:%(2026年1月1日時点・国土交通省 2026年3月17日公表) バーの長さは最大値4.5%を100%とした相対値
東京圏・住宅地
 
+4.5%
全国・全用途平均
 
+2.8%
全国・住宅地
 
+2.1%
東京圏全国全用途全国住宅地
【注記】全用途平均の全国値は5年連続の上昇。東京圏の住宅地は全国平均を大きく上回っています。
【出典】国土交通省「令和8年地価公示」(2026年3月17日公表)
首都圏の相続不動産、判断の分かれ目
  • 地価上昇は「売り」には追い風、「相続税」には逆風——売却価格は上がりやすい一方、路線価も連動して上がるため、次の相続での課税価格は増えます。東京23区で自宅を保有している方は、この両面を同時に考える必要があります。
  • 更地より「建物付き」のほうが有利なケースがある——住宅用地の特例が使えるうえ、購入者が住宅ローンを組みやすくなります。ただし空き家の3,000万円控除を使うには耐震改修または除却が必要になる場合があるため、どの特例を優先するかで判断が変わります。
  • 一都三県では「売れない土地」は多くない——国庫帰属制度に頼る前に、まず査定を取ることをおすすめします。旗竿地・再建築不可・借地権付きなど、条件が難しい物件でも買い手がつくのが首都圏の市場の特徴です。
  • 相続人が複数なら「換価分割」も選択肢——不動産を売却して現金化してから分ける方法です。共有名義のまま持ち続けると、次の相続で権利者が増え、売却の合意形成がさらに難しくなります。
 

12. 相続での住宅の売却に困ったら自由住宅NAVI

相続の際に住宅の売却をしようと思っても、いざ当事者になると、知識を身につけていても「どう動くのがベストか」は不安になるものです。手続きは煩雑で、いつまでに何をしなければならないかというルールもあります。親族間で意見が割れることも少なくありません。

そのようなとき、当事者だけで話し合うのではなく、第三者の専門的な意見が入ることはとても効果的です。自分たちの行動が明確になるだけでなく、その道に詳しい人の意見であれば全員の合意も得やすくなります。

住宅の売却をご検討の際は、自由住宅NAVIにご相談ください。住宅を買い取るだけでなく、経験豊富なスタッフが有効活用のご提案もいたします。

  • 宅地は「間取り提案付き」でご紹介——買主が住まいのイメージを持てるため、一般的な更地に比べて契約が早いとご評価いただいています
  • 中古物件はリフォームで資産価値を上げてからの売却も——更地にしての売却と比較し、物件に合った売却プランをご提案します
  • 思い出のある建物を残したい場合も対応——部分リフォームや景観に合った施工を加え、元の状態を残しながら価値を上げる工夫をご提案します
  • 一都三県・首都圏のエリア事情に精通——東京23区から郊外まで、地域ごとの相場と買主層を踏まえたご提案が可能です

他の不動産会社に相談したものの希望に合った条件の提示がされなかった方、断られてしまった方も、どうぞお気軽にご相談ください。

相続した不動産のこと、まずはご相談ください
売却・活用・そのまま残す——どの選択がご家族にとって最善か、
一都三県の市場に精通したスタッフが一緒に整理します。
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よくある質問

Q. 相続とは何ですか?
A. 相続とは、亡くなった方(被相続人)が所有していた財産や権利義務を、配偶者や子などの一定の身分関係にある人(相続人)が受け継ぐことです。相続は被相続人が亡くなった日に自動的に始まり、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借入金などのマイナスの財産も引き継ぎます。マイナスのほうが大きい場合は、相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ相続放棄または限定承認を申述する必要があります。
Q. 相続税は何人に1人がかかりますか?
A. 国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(2025年12月公表)によると、全国の課税割合は10.4%で、亡くなった方のおよそ10人に1人に相続税が課税されています。都道府県別では東京都が20.0%で最も高く、東京23区内に限ると21.6%(前年20.3%)です。東京23区ではおよそ5人に1人が相続税の課税対象になっている計算になります。
Q. 相続税の基礎控除はいくらですか?
A. 相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。法定相続人が3人なら4,800万円となり、遺産の総額がこの金額以下であれば相続税はかからず、申告も原則不要です。平成27年(2015年)1月1日以後の相続からこの計算式になり、それ以前の「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」から約40%引き下げられました。この改正により、課税割合は4.4%から8.0%へほぼ倍増しています。
Q. 相続登記はいつまでにすればよいですか?
A. 2024年4月1日から相続登記は義務化され、相続の開始および所有権の取得を知った日から3年以内に申請しなければなりません。正当な理由なく期限を過ぎると10万円以下の過料の対象になります。2024年4月1日より前に発生した相続にも遡って適用され、この場合の期限は2027年3月31日です。期限に間に合わないときは「相続人申告登記」という簡易な手続きで義務を果たすことができますが、正式な相続登記の代わりにはならないため、遺産分割の成立後に別途登記が必要です。
Q. 相続した不動産をすぐ売れば固定資産税はかかりませんか?
A. かかります。固定資産税と都市計画税は、毎年1月1日時点の登記名義人(所有者)に対してその年度分の全額が課税されます。年の途中で売却しても、その年度の納税義務者は1月1日時点の所有者のままです。実務上は売買契約で引渡日を基準に日割り精算するのが一般的ですが、これは当事者間の取り決めであり、自治体に対する納税義務がなくなるわけではありません。ただし、売却が早いほど翌年以降の課税を止められるため、負担の総額は確実に軽くなります。
Q. 相続した不動産を売るときに使える税の特例は何がありますか?
A. 代表的なものは3つです。1つ目は「取得費加算の特例」で、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年(実質3年10か月)以内に売却すれば、納めた相続税の一部を取得費に加算して譲渡所得税を圧縮できます。2つ目は「空き家の3,000万円特別控除」で、昭和56年5月31日以前に建築された被相続人の居住用家屋などの要件を満たすと譲渡所得から最大3,000万円(相続人が3人以上の場合は1人あたり2,000万円)を控除でき、令和9年(2027年)12月31日までの譲渡が対象です。3つ目は「小規模宅地等の特例」で、こちらは売却ではなく相続税評価の段階で、特定居住用宅地等なら330㎡まで評価額を80%減額できます。
Q. 使い道のない土地を相続してしまった場合はどうすればよいですか?
A. 売却のほか、2023年4月27日に始まった「相続土地国庫帰属制度」を利用して国に土地を引き取ってもらう方法があります。法務省の統計では、2026年2月28日時点の申請は累計5,140件、実際に国庫に帰属したのは累計2,542件です。承認されると10年分の土地管理費相当額を負担金として納める必要があり、承認通知の到達日の翌日から30日以内に納付しなければ承認の効力が失われます。建物が建っている土地や境界が不明確な土地は申請できないため、まずは売却可能性を検討し、売れない場合の選択肢として位置づけるのが現実的です。東京・一都三県では買い手がつく物件も多いため、先に査定を取ることをおすすめします。
Q. 空き家を相続したまま放置するとどうなりますか?
A. 2023年12月13日に施行された改正空家等対策特別措置法により、従来の「特定空家等」に加えて、放置すれば特定空家になるおそれのある「管理不全空家等」も勧告の対象になりました。勧告を受けると住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例(小規模住宅用地は6分の1)が適用されなくなり、土地の固定資産税は最大でおよそ6倍に増えます。建物の劣化による資産価値の低下も進むため、活用予定がない場合は早めに売却か管理委託を判断することをおすすめします。

まとめ

相続は、誰にでも必ず訪れます。そして2023年から2026年にかけて、相続に関するルールは立て続けに変わりました。最後に、この記事の要点を整理します。

テーマ 押さえるべきポイント
相続税の課税割合 全国10.4%(令和6年分・過去最高)、東京都20.0%、東京23区21.6%。首都圏では「他人事」ではありません
基礎控除 3,000万円+600万円×法定相続人の数。平成27年から約40%引き下げ
相続登記 2024年4月1日から義務化。3年以内、過料10万円以下。過去の相続は2027年3月31日が期限
売却時の税優遇 取得費加算(3年10か月)/空き家3,000万円控除(2027年12月31日まで)/小規模宅地等の特例(330㎡・80%減)
固定資産税 毎年1月1日時点の所有者に課税。年内売却でもその年度分の納税義務は残ります
空き家の放置 管理不全空家の勧告で住宅用地特例が外れ、土地の固定資産税は最大約6倍
生前贈与 暦年贈与の持ち戻しが3年→7年へ段階的に延長。相続時精算課税には年110万円の基礎控除が新設
使えない土地 相続土地国庫帰属制度(2023年4月27日開始)。ただし要件は厳格で、負担金も必要

共通しているのは、どの制度にも「期限」があるということです。3か月、10か月、3年、3年10か月——気づいたときには過ぎていた、というのが相続で最も多い後悔です。ご家族が元気なうちに、財産の全体像と不動産の扱いについて話し合っておくことが、最も確実な備えになります。

そして、相続財産の中に不動産が含まれるのであれば、その扱いは相続税額にも、その後の管理コストにも、次の世代の相続にも影響します。まずは「いくらで売れるのか」を知ることが、すべての判断の出発点です。自由住宅NAVIでは、東京・一都三県の相続不動産について、査定から売却、活用のご提案までワンストップで承っています。どうぞお気軽にご相談ください。

出典・参考資料

※本記事は2026年8月7日時点で公表されている情報にもとづいて作成しています。税制・法令は改正される場合があります。個別の税額計算や特例の適用可否については、必ず税理士・司法書士等の専門家、または所轄の税務署・法務局・市区町村窓口にご確認ください。
※記事内の「自由住宅NAVI 算出」と明記した数値は、出典元の公表値をもとに当社が計算したものです。