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相続税を払いすぎたときの「更正の請求」|期限は5年、還付されやすい土地の評価と手続き

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相続税の還付は5年以内|更正の請求の期限と土地の評価
2023年10月29日公開 / 2026年9月21日更新
この記事でわかること
  • 相続税を払いすぎたときの手続きは、法令上「更正の請求」といいます。期限は、法定申告期限から5年以内です(国税通則法第23条第1項)。相続税の法定申告期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内」なので(相続税法第27条第1項)、知った日の翌日から数えるとおよそ5年10か月が目安になります。
  • 「8割が過払い」という数値の出典は確認できませんでした。国税庁は相続税の過払いの割合を公表していません。公表されているのは申告の実績で、令和6年分(2024年分)は、死亡者数1,605,378人に対し、相続税額のある申告書の提出に係る被相続人数が166,730人(課税割合10.4%)、これに相続税額のない申告書39,755人を加えて206,485人でした(国税庁・2025年12月公表)。
  • 見直しの余地が大きいのは土地です。令和6年分の相続財産245,415億円のうち、土地は74,074億円で30.2%を占めます(国税庁・2025年12月公表)。路線価は地価公示価格等の80%程度を目安に定められ、実際の評価額は奥行距離・不整形の度合い・角地などによる画地調整率を掛けて計算します(国税庁・2026年7月)。この調整の当て方で評価額に差が出ます。
  • 申告のときに分けられなかった財産が後から分割できた場合は、分割が成立した日の翌日から4か月以内に更正の請求ができます(相続税法第32条第1項第1号)。配偶者の税額の軽減(1億6千万円または法定相続分相当額まで)や小規模宅地等の特例は、分割されていない財産には使えないため、ここが実務でもっとも多い還付のきっかけになります。
  • 更正の請求をしても、必ず税金が戻るわけではありません。税務署長は請求の内容を調査したうえで、減額の更正をするか、「更正をすべき理由がない旨」を請求した人に通知します(国税通則法第23条第4項)。また、請求をしている間も納めるべき税金の徴収は猶予されないのが原則です(同条第5項)。

1. 相続税の還付とは|法令上の名前は「更正の請求」

相続税の還付とは、いったん申告して納めた相続税が本来納めるべき額より多かったときに、税務署長に減額の更正を求め、納めすぎた分の返還を受けることをいいます。法令上の手続きの名前は「更正の請求」です。根拠は国税通則法第23条第1項で、次のように定められています。

「納税申告書を提出した者は、次の各号のいずれかに該当する場合には、当該申告書に係る国税の法定申告期限から五年……以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等……につき更正をすべき旨の請求をすることができる」(国税通則法第23条第1項。2026年9月21日にe-Gov法令検索で確認)

ここで大切なのは、相続税が所得税の年末調整のように自動で精算される税金ではない、ということです。相続税は、相続人が自分で財産を評価して申告する税金です。評価が多めになっていても、税務署から「払いすぎです」と連絡が来ることは基本的にありません。納めすぎに気づいて動けるのは、申告した本人か、その依頼を受けた税理士だけです。この仕組みのため、納めすぎたまま気づかずに期限が過ぎてしまうことがあります。

なお、税額を少なく申告していた場合に自分で直す手続きは「修正申告」で、こちらとは向きが逆になります。更正の請求は、あくまで納めすぎた側の手続きです。

2. 「8割が過払い」の根拠を確かめる|国税庁が公表している数字

「相続税の8割が過払い」という数値の出典は確認できませんでした。国税庁は、相続税の申告のうちどれだけが過払いだったかという割合を公表していません。相続税の過払いは、更正の請求をして税務署長が減額の更正をして初めて確定するもので、請求しなかった申告が過払いだったかどうかを外から数えることはできないためです。ここでは、根拠の確かめられない割合ではなく、公表されている申告の実績から相続税の全体像を見ます。

国税庁が2025年12月に公表した「令和6年分 相続税の申告事績の概要」によると、令和6年分(2024年分)の状況は次のとおりです。

表1:相続税の申告事績(令和5年分と令和6年分)
項目 令和5年分(2023年分) 令和6年分(2024年分)
被相続人数(死亡者数) 1,576,016人 1,605,378人
相続税額のある申告書の提出に係る被相続人数 155,740人 166,730人
相続税額のない申告書の提出に係る被相続人数 38,121人 39,755人
課税割合 9.9% 10.4%
課税価格の総額 21兆6,335億円 23兆3,846億円
申告税額の総額 3兆53億円 3兆2,446億円
被相続人1人当たりの税額 1,930万円 1,946万円
出典:国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(2025年12月公表・2026年9月21日確認)。課税割合は「相続税額のある申告書の提出に係る被相続人数」÷「死亡者数」。令和5年分は2024年10月31日まで、令和6年分は2025年10月31日までに提出された申告書(修正申告書を除く)のデータにもとづきます。

亡くなった方のおよそ10人に1人に相続税の申告が生じ、納税額は被相続人1人当たり平均で1,946万円です。基礎控除額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に引き下げられた平成27年(2015年)以降で、被相続人数・課税価格・税額のいずれも最高になりました(相続税法第15条第1項)。東京をはじめとする首都圏では地価が高いため、都内に持ち家があるだけで基礎控除を超えるケースは珍しくありません。

3. 更正の請求の期限|5年以内が何を指すのか

更正の請求の期限は、原則として法定申告期限から5年以内です。ここでいう法定申告期限は、暦の上の相続開始日ではなく、「相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月」です(相続税法第27条第1項)。条文は「知つた日の翌日から十月以内」としています。

つまり、起算点をそろえると次のようになります。

表2:相続税の申告と更正の請求の期限
手続き 期限 根拠
相続税の申告・納付 相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内 相続税法第27条第1項
更正の請求(原則) 法定申告期限から5年以内
=知った日の翌日から数えておよそ5年10か月
国税通則法第23条第1項
更正の請求(相続税法の特則) 未分割財産の分割などの事由が生じたことを知った日の翌日から4か月以内 相続税法第32条第1項
更正の請求(国税通則法の後発的事由) 判決の確定などがあった日の翌日から起算して2か月以内 国税通則法第23条第2項
出典:e-Gov法令検索「国税通則法」第23条、「相続税法」第27条・第32条(いずれも2026年9月21日確認)、国税庁「B1-27 相続税及び贈与税の更正の請求手続」(2026年9月21日確認)。平成23年12月1日以前に法定申告期限が到来した申告は、原則として法定申告期限から1年以内です。贈与税は原則として法定申告期限から6年以内になります(相続税法第32条第2項)。

申告期限から5年を過ぎると、更正の請求はできなくなるのが原則です。ただし、あとで説明する後発的な事由にあたる場合は、5年を過ぎていても、その事由を知った日から数えた短い期間のなかで請求できることがあります(国税通則法第23条第2項は、その期間の満了日が5年の期間の満了日より後に来る場合に適用されます)。5年で一律に打ち切り、と考えないでください。

また、更正の請求の回数を制限する規定は条文には見当たりませんが、同じ理由で繰り返し請求しても結論は変わりません。期限内に一度、理由と資料をそろえて請求するのが実務の考え方です。

4. 後発的な事由による更正の請求|未分割・遺留分・認知

後発的な事由による更正の請求とは、申告したあとに起きたできごとによって、申告した税額が結果として多すぎることになった場合の手続きです。相続税には専用の規定があり、相続税法第32条第1項が事由を列挙しています。条文の主なものを、実際の場面に当てはめて整理します。

表3:相続税法第32条第1項の主な事由と更正の請求の期限
条文の事由 実際に起きること 期限
第1号:未分割の財産が分割された 申告期限までに遺産分割がまとまらず法定相続分で申告したあと、分割が成立して取得分が変わった 事由が生じたことを知った日の翌日から4か月以内
第2号:相続人に異動が生じた 認知の裁判が確定した、推定相続人の廃除やその取消しがあった、相続の放棄が取り消された 事由が生じたことを知った日の翌日から4か月以内
第3号:遺留分侵害額が確定した 遺留分侵害額の請求にもとづき支払うべき金銭の額が確定し、渡した側の取得財産が減った 事由が生じたことを知った日の翌日から4か月以内
第4号:遺言書が見つかった/遺贈が放棄された 申告後に遺言書が発見され、財産の行き先が変わった 事由が生じたことを知った日の翌日から4か月以内
第8号:配偶者の税額の軽減が使えるようになった 未分割で申告したあとに分割が成立し、配偶者の税額の軽減を適用し直せるようになった 事由が生じたことを知った日の翌日から4か月以内
出典:e-Gov法令検索「相続税法」第32条第1項(2026年9月21日確認)。表は条文の事由を要約したもので、第5号から第7号、第9号・第10号(物納の条件、贈与の取扱い、国外転出時課税の納税猶予など)は省いています。

このなかで件数が多いのは第1号と第8号です。遺産分割がまとまらないまま申告期限が来ると、いったん法定相続分で分けたものとして申告し、税金を納めます。このとき配偶者の税額の軽減と小規模宅地等の特例は、分割されていない財産には適用できません。あとで分割が成立すれば、これらを適用し直した税額との差額が戻ってくる可能性があります。

この場合の手続きには前提があります。当初の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添えておき、申告期限から3年以内に分割することです。やむを得ない事情で3年以内に分割できないときは、税務署長の承認を受け、その事情がなくなった日の翌日から4か月以内に分割すれば対象になります(国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」)。この見込書の添付を忘れたまま申告してしまうケースは実務でよくあります。手元の申告書の控えに見込書が綴じられているか、確認しておくとよいでしょう。

5. 見直しの余地が大きいのは土地|相続財産の3割

相続税額を大きく左右するのは土地の評価です。このことは、国税庁の統計からも読み取れます。令和6年分(2024年分)に申告された相続財産245,415億円の内訳は次のとおりです。

図1:相続財産の金額の構成比(令和6年分・2024年分)
単位:%
34.9%
 
30.2%
 
17.8%
 
12.3%
 
4.8%
 
現金・預貯金等
土地
有価証券
その他
家屋
金額は土地74,074億円、家屋11,901億円、有価証券43,676億円、現金・預貯金等85,602億円、その他30,162億円、合計245,415億円。相続税額のある申告書のデータによります。バーの高さは最大値(現金・預貯金等)を100%としています。

出典:国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(2025年12月公表・2026年9月21日確認)。

土地と家屋を合わせると35.0%で、相続財産のおよそ3分の1が不動産です。しかも預貯金や上場株式は金額が一義的に決まるのに対し、土地は評価の仕方に幅が生まれます。見直しの余地が土地に集中するのは、このためです。

土地の金額は10年間でおおむね増え続けています。

図2:申告された相続財産のうち土地の金額の推移(単位:億円)
単位:億円
59,400
 
57,610
 
65,428
 
70,688
 
71,425
 
74,074
 
平成27年分
2015年分
令和元年分
2019年分
令和3年分
2021年分
令和4年分
2022年分
令和5年分
2023年分
令和6年分
2024年分
相続税額のある申告書のデータ。平成28年分から平成30年分、令和2年分は紙幅の都合で省いています(それぞれ60,359億円・60,960億円・60,818億円・60,389億円)。バーの高さは令和6年分を200pxとした比です。

出典:国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」参考計表4(2025年12月公表・2026年9月21日確認)。

6. 土地の評価で見直せる主な事由|路線価と画地調整率

路線価とは、相続税や贈与税で土地等を評価するために、国税局(所)が道路ごとに定めている1平方メートル当たりの価額です。国税庁は令和8年分(2026年分)の路線価等を2026年7月1日に公開しました。路線価は1月1日を評価時点とし、地価公示価格等をもとにした価格の80%程度を目途に定められています。

ここで見落とされやすいのが、評価額は路線価にそのまま面積を掛けて出すものではない、という点です。国税庁の説明では「評価対象地が接する路線の路線価に、必要な画地調整率(評価対象地の形状等(奥行距離、不整形の度合い、角地など)に基づき、価額を補正する率)及び地積を乗じて評価額を算出します」とされています。この画地調整率をどこまで丁寧に当てるかで、同じ土地でも評価額が変わります。

評価を見直せるかどうかが問題になりやすい土地について、国税庁の取扱いを整理します。

表4:土地の状況ごとの国税庁の取扱い
土地の状況 国税庁の取扱い 根拠
形がいびつな土地 不整形地補正率などの画地調整率で補正する。三大都市圏で500㎡以上、それ以外の地域で1,000㎡以上の宅地は、一定の要件を満たせば規模格差補正率も適用する 財産評価基本通達、国税庁「No.4609 地積規模の大きな宅地の評価」
線路や踏切に面している土地 「震動の甚だしい宅地」または騒音により取引金額に影響を受けると認められるものとして、利用価値が低下している部分に対応する価額の10%を控除できる 国税庁「No.4617 利用価値が著しく低下している宅地の評価」
墓地に隣接している土地 「忌み」により取引金額に影響を受けると認められるものとして、同じく10%の控除の対象になりうる 同上
日当たりの悪い土地 「日当たりが悪い」だけでは足りません。建築基準法第56条の2に定める日影時間を超える日照阻害があり、取引金額に影響を受けると認められる場合に10%の控除の対象になります 同上
鳥居やほこらがある土地 土地の減額ではなく、別の取扱いです。庭内神しとその敷地・附属設備が、日常礼拝の対象として一体不可分の関係にあると認められる場合、その敷地等は相続税の課税価格に算入しない財産に当たりうるとされています(平成24年に取扱いが変更されました) 相続税法第12条第1項第2号、国税庁「庭内神しの敷地等」
実際の面積が登記簿情報より小さい土地 土地は実際の地積によって評価するのが原則です。登記簿の地積と実測が食い違う場合は、実測にもとづく評価を検討します 財産評価基本通達8(地積)
出典:国税庁タックスアンサーNo.4609・No.4617、国税庁 質疑応答事例「庭内神しの敷地等」、e-Gov法令検索「相続税法」第12条(いずれも2026年9月21日確認)。No.4617・No.4609はいずれも令和8年(2026年)4月1日現在の法令等にもとづく内容です。

ここに大切な但し書きがあります。国税庁は「路線価、固定資産税評価額または評価倍率が、利用価値の著しく低下している状況を考慮して付されている場合にはしんしゃくしません」としています。線路沿いや墓地の隣という条件が、その道路の路線価そのものにすでに織り込まれているのであれば、さらに10%を引くことはできません。「線路沿いだから必ず減額できる」とは言えない、というのが正確な理解です。周辺の路線価との比較を含めて、個別に確かめる必要があります。

7. 適用漏れが起きやすい特例|小規模宅地等と配偶者の税額の軽減

小規模宅地等の特例とは、被相続人等の事業用または居住用だった宅地等について、一定の面積までの部分の評価額を減額する制度です。東京都内のように地価の高い地域では、この特例を使えるかどうかで税額が大きく変わります。

表5:小規模宅地等の特例の区分・限度面積・減額割合
宅地等の区分 限度面積 減額される割合
特定居住用宅地等(被相続人等の居住用) 330㎡ 80%
特定事業用宅地等(貸付事業以外の事業用) 400㎡ 80%
特定同族会社事業用宅地等 400㎡ 80%
貸付事業用宅地等 200㎡ 50%
出典:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」(令和8年=2026年4月1日現在法令等・2026年9月21日確認)。貸付事業用宅地等がない場合、特定事業用等宅地等と特定居住用宅地等は合計730㎡まで併せて選択できます。各区分には、取得者や居住・事業の継続などの要件があります。

もう一つが配偶者の税額の軽減です。配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、1億6千万円と配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までは、配偶者に相続税がかからない制度です。ただし、隠蔽または仮装されていた財産は対象になりません。

この二つに共通する落とし穴が、どちらも「分割されている」ことが前提だという点です。申告期限までに分割がまとまらなければ、いったんは特例を使わずに計算した税額を納めることになります。だからこそ、前述の「申告期限後3年以内の分割見込書」と、分割成立後4か月以内の更正の請求が効いてきます。国税庁も「相続税の申告後に行われた遺産分割に基づいて配偶者の税額軽減を受ける場合は、分割が成立した日の翌日から4か月以内に更正の請求という手続をする必要があります」と明記しています。

8. 税理士なら誰でも相続税に詳しいのか|登録者数と申告件数

税理士の登録者数と相続税の申告件数は次のとおりです。

  • 税理士登録者数:82,343人(日本税理士会連合会・2026年8月末日現在)。税理士法人の届出数は5,330件(主たる事務所)です。
  • 相続税の申告書の提出に係る被相続人数:206,485人(国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」2025年12月公表。相続税額のある申告166,730人と、相続税額のない申告39,755人の合計)。
図3:税理士の登録者数と相続税の申告件数
単位:人
206,485人
 
82,343人
 
相続税の申告書の提出に係る
被相続人数(令和6年分・2024年分)
税理士登録者数
(2026年8月末日現在)
206,485÷82,343=2.51件で、税理士1人当たりの相続税の申告件数は単純計算で年2.5件になります。あくまで全体を人数で割った単純計算で、実際の担当件数を示すものではありません。相続税を扱わない税理士も、年に数十件を扱う税理士もいます。バーの高さは最大値(申告件数)を100%としています。

出典:日本税理士会連合会「税理士登録者数」(2026年8月末日現在・2026年9月21日確認)、国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(2025年12月公表・同日確認)。

平成27年(2015年)の基礎控除の引き下げで申告件数は大きく増えました。それでも、法人の決算や所得税の確定申告に比べれば、相続税は税理士1人が生涯に扱う件数の少ない税目です。土地の評価は現地と資料を突き合わせる作業で、経験の差が出やすい分野です。

ただし、担当件数の少なさは、個々の税理士の力量を示すものではありません。依頼するときは、相続税の申告の実績、土地の現地調査をどこまで行うか、評価の根拠をどう説明してくれるかを具体的に聞くほうが確かです。

9. 更正の請求の進め方|書類と流れ

更正の請求の手続きは、国税通則法第23条第3項と国税庁の案内にもとづき、おおまかに次のように進みます。

  1. 手順1 申告書の控えと資料をそろえる。相続税の申告書一式、土地及び土地の上に存する権利の評価明細書、遺産分割協議書、登記事項証明書、公図・測量図などです。申告書の控えが手元にない場合は、税務署で保有個人情報の開示請求により取得できます。
  2. 手順2 どこに見直しの余地があるかを検討する。土地の画地調整、特例の適用漏れ、後発的な事由の有無を確認します。ここは相続税の申告を扱う税理士に依頼するのが現実的です。
  3. 手順3 更正の請求書を作成する。更正後の課税標準等・税額等、更正の請求をする理由、請求をするに至った事情の詳細、更正前に納付すべき税額などを記載します(国税通則法第23条第3項)。相続税の更正の請求書は令和5年1月分以降の様式が国税庁サイトにあります。
  4. 手順4 事実を証明する書類を添えて提出する。国税庁は「更正の請求の理由の基礎となる、事実を証明する書類」の添付が必要としています。提出先は納税地の所轄税務署長です。相続税はe-Taxソフトからの提出もできますが、請求の内容によっては書面での提出になります。
  5. 手順5 税務署の調査と通知を待つ。税務署長は請求に係る課税標準等・税額等を調査し、更正をするか、更正をすべき理由がない旨を通知します(同条第4項)。
  6. 手順6 還付を受ける。減額の更正がされると、納めすぎた税額が還付されます。還付金には、国税通則法第58条にもとづき還付加算金が加算される場合があります。
出典:e-Gov法令検索「国税通則法」第23条、国税庁「B1-27 相続税及び贈与税の更正の請求手続」、同「相続税の更正の請求書(令和5年1月分以降)の様式」(いずれも2026年9月21日確認)。処理にかかる期間は事案によって異なります。

10. 更正の請求をする前に知っておきたい注意点

ここまで読んで「うちも当てはまるかもしれない」と感じた方に、先に伝えておきたいことが4つあります。

  • 請求すれば戻るとは限りません。税務署長は調査のうえ、減額の更正をするか「更正をすべき理由がない旨」を通知します(国税通則法第23条第4項)。この通知に納得できないときは、再調査の請求や審査請求という不服申立ての道があります。
  • 請求の間も徴収は猶予されないのが原則です。国税通則法第23条第5項は「更正の請求があつた場合においても、税務署長は、その請求に係る納付すべき国税……の徴収を猶予しない」と定めています(税務署長が相当の理由があると認めるときは、全部または一部を猶予できます)。未納の相続税がある状態で請求しても、納付を待ってもらえるわけではありません。
  • 土地の評価を下げると、売るときの税金に影響することがあります。相続した不動産を相続税の申告期限の翌日から3年以内に売った場合、納めた相続税のうち一定額を取得費に加算できる特例があります。相続税額が減れば、この加算額も減ります。売却の予定があるなら、合わせて検討してください。
  • 他の相続人にも影響が及びます。相続税は財産の総額から計算した総額を各人で按分する仕組みなので、土地の評価を見直せば、その土地を取得していない相続人の税額も動きます。全員に説明せずに進めると、あとで話がこじれます。

税額の計算や更正の請求の要否についての個別具体的な判断は、税理士法により税理士・税理士法人の業務とされています。当社は不動産の会社であり、税務の判断は行いません。本記事は制度の一般的な説明にとどまります。実際の可否は、相続税の申告を扱う税理士にご確認ください。

路線価図と公図を広げて土地の形状を確認する場面

11. 相続税の還付のよくある質問

Q相続税の還付はいつまで請求できますか?

A原則として、法定申告期限から5年以内です(国税通則法第23条第1項)。相続税の法定申告期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月」なので(相続税法第27条第1項)、知った日の翌日から数えるとおよそ5年10か月が目安になります。ただし、未分割の財産が分割された、遺留分侵害額が確定した、認知の裁判が確定したといった後発的な事由による場合は、その事由が生じたことを知った日の翌日から4か月以内という別の期限になります(相続税法第32条第1項)。判決の確定などによる場合は、その日の翌日から起算して2か月以内です(国税通則法第23条第2項)。

Q「相続税の8割が過払い」というのは本当ですか?

Aこの割合の出典は確認できませんでした。国税庁は相続税の過払いの割合を公表していません。公表されているのは申告の実績で、令和6年分(2024年分)は、死亡者数1,605,378人に対し、相続税額のある申告書の提出に係る被相続人数が166,730人(課税割合10.4%)でした(国税庁・2025年12月公表)。過払いが実際にどれだけあるかを外から数える統計はありませんので、「8割」という数字を前提に判断するのは避けてください。ご自身の申告に見直しの余地があるかどうかは、申告書の控えと土地の資料をもとに個別に確かめる必要があります。

Q線路沿いや墓地の隣の土地なら、必ず評価を下げられますか?

Aそうとは限りません。国税庁は、震動の甚だしい宅地や、騒音・日照阻害・臭気・忌み等により取引金額に影響を受けると認められる宅地について、利用価値が低下している部分に対応する価額の10%を控除できるとしています(No.4617)。ただし同じ案内には「路線価、固定資産税評価額または評価倍率が、利用価値の著しく低下している状況を考慮して付されている場合にはしんしゃくしません」という但し書きがあります。その条件がすでに路線価に織り込まれていれば、重ねて減額することはできません。また日照阻害は、建築基準法第56条の2に定める日影時間を超えるものとされています。

Q遺産分割がまとまらないまま申告しました。あとから特例を使えますか?

A使える場合があります。配偶者の税額の軽減と小規模宅地等の特例は、分割されていない財産には適用できませんが、当初の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添えたうえで、申告期限から3年以内に分割すれば対象になります。分割が成立した日の翌日から4か月以内に更正の請求をしてください(国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」、相続税法第32条第1項)。3年以内に分割できないやむを得ない事情があり税務署長の承認を受けた場合は、その事情がなくなった日の翌日から4か月以内の分割でも対象になります。

Q更正の請求をすると税務調査が来ますか?

A国税通則法第23条第4項は「税務署長は、更正の請求があつた場合には、その請求に係る課税標準等又は税額等について調査し、更正をし、又は更正をすべき理由がない旨をその請求をした者に通知する」と定めています。請求の内容を確かめる調査は、制度として当然に予定されているものです。これは、いわゆる税務調査による是正とは目的が異なります。ただし、申告全体を見直す過程で、土地の評価以外に申告漏れが見つかる可能性はあります。請求する前に、申告の内容を全体として点検しておくことをおすすめします。

Q相続した実家を売る予定です。更正の請求との順番はどう考えればよいですか?

A相続した不動産を相続税の申告期限の翌日から3年以内に売った場合、納めた相続税のうち一定額を譲渡所得の計算上、取得費に加算できる特例があります。更正の請求で相続税額が減ると、この加算できる額も減ります。一方で、更正の請求の期限は法定申告期限から5年以内、取得費加算の対象となる売却は申告期限の翌日から3年以内と、期限の長さが違います。どちらを先に判断すべきかは、土地の評価額と売却価格の見込みによって変わりますので、売却の相談と税務の相談を並行して進めてください。

相続した実家の前で今後について話し合う家族

12. まとめ|押さえておきたい6点

  • 相続税を払いすぎたときの手続きは「更正の請求」です。期限は原則として法定申告期限から5年以内で、相続の開始があったことを知った日の翌日から数えるとおよそ5年10か月が目安になります(国税通則法第23条第1項、相続税法第27条第1項)。
  • 「相続税の8割が過払い」という割合の出典は確認できませんでした。国税庁は過払いの割合を公表していません。令和6年分の課税割合は10.4%、被相続人1人当たりの税額は1,946万円です(2025年12月公表)。
  • 見直しの余地が大きいのは土地です。令和6年分の相続財産245,415億円のうち土地は74,074億円で30.2%を占め、家屋と合わせると35.0%になります。
  • 路線価は地価公示価格等の80%程度を目安に定められ、評価額は奥行距離・不整形の度合い・角地などの画地調整率を掛けて算出します。線路沿いや墓地の隣といった事情は10%の控除の対象になりえますが、路線価にすでに織り込まれている場合は重ねて減額できません(国税庁No.4617)。
  • 実務でもっとも多い還付のきっかけは、未分割だった財産が後から分割できたことによる、配偶者の税額の軽減と小規模宅地等の特例の適用です。分割が成立した日の翌日から4か月以内に更正の請求をしてください(相続税法第32条第1項)。
  • 更正の請求をしても、税務署長が「更正をすべき理由がない旨」を通知することがあります(国税通則法第23条第4項)。請求中の徴収も原則として猶予されません。期限内に一度、理由と資料をそろえて請求するのが実務の考え方です。
相続した土地と建物の資料を前に相談する場面

相続した東京・一都三県の家と土地について、活用・売却・建て替えのご相談を承ります。

自由住宅では、相続した戸建てや土地をお持ちの方に、現況の調査、周辺の取引事例をふまえた価格の見立て、貸す・売る・建て替えるそれぞれの進め方を、資料を使ってご説明しています。相続税の申告や更正の請求そのものは税理士の業務ですので、当社では税務の判断は行いませんが、ご希望があれば提携する相続税を扱う税理士法人をご紹介します。土地の形状や接道の状況など、評価の前提になる不動産の実情の整理からお手伝いできます。

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出典一覧

出典・参考資料

本記事は2026年9月21日時点で公表されている情報にもとづいています。税額の計算、更正の請求の要否や見込みについての個別具体的な判断は、税理士法により税理士・税理士法人の業務とされており、当社は行いません。制度の要件は税制改正により変わりますので、手続きの前に必ず最新の情報をご確認のうえ、税理士にご相談ください。

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