空き家の固定資産税はいつ上がる?|管理不全空家の勧告で住宅用地特例が外れる仕組みと相続した実家の選び方
- 空き家を持っているだけで固定資産税が上がるわけではありません。上がるのは、市町村長から「勧告」を受けたときです。空家等対策の推進に関する特別措置法にもとづき、管理不全空家等として勧告(第13条第2項)、または特定空家等として勧告(第22条第2項)を受けた土地は、地方税法第349条の3の2の住宅用地特例の対象から外れます。
- 住宅用地特例が外れると、200㎡以下の部分の課税標準は価格の6分の1から6分の6に戻ります。200㎡を超える部分は3分の1から3分の3です(地方税法第349条の3の2)。都市計画税も3分の1(200㎡以下)・3分の2(200㎡超)の特例が外れます(同法第702条の3)。よく言われる「6倍」はこの6分の1が外れることを指しています。
- 2024年度(令和6年度)に管理不全空家等の勧告を受けたのは378件、特定空家等を含む空家法の措置は累計48,362件です。国土交通省・総務省の調査(2025年3月31日時点・調査対象1,741市区町村)によります。管理不全空家等は2023年12月13日に新設された区分で、2023年度の勧告は0件、2024年度が最初の378件でした。
- いきなり勧告が来ることはありません。管理不全空家等はまず指導(第13条第1項)、特定空家等はまず助言または指導(第22条第1項)があり、それでも状態が改善されないときに勧告に進みます。指導や助言の段階で対応すれば、住宅用地特例は外れません。
- 空き家は全国で900万2千戸、空き家率は13.8%で過去最高です(総務省 令和5年住宅・土地統計調査・2024年9月25日公表)。このうち、賃貸用でも売却用でも別荘でもない空き家は385万6千戸で、一戸建ての空き家352万3千戸のうち80.9%がこの区分です。相続した実家がそのまま放置されている状況が、数字にあらわれています。
- 2026年9月3日に空家法が改正され、空家等管理活用支援法人に指定できる法人に「その他の営利を目的としない法人」が加わりました。第16次地方分権一括法(令和8年法律第27号・2026年6月3日公布)による改正で、内閣府の資料では加わる法人の例として商工会議所・商工会が挙げられています。遠方の空き家を任せられる相手の選択肢が増える方向の改正ですが、指定するかどうかは市区町村ごとの判断です。固定資産税に関わる規定は変わっていません。
1. 空き家の固定資産税が上がるのはいつか|結論
空き家の固定資産税とは、人が住んでいない家屋とその敷地にかかる固定資産税のことです。空き家になったからといって、自動的に税額が上がる仕組みにはなっていません。税額が上がるのは、市町村長から勧告を受けたときです。
地方税法第349条の3の2第1項は、住宅用地特例の対象から次の2つを除くと定めています。
- 空家法第13条第2項の規定により所有者等に対し勧告がされた、同法第13条第1項に規定する管理不全空家等の敷地の用に供されている土地
- 空家法第22条第2項の規定により所有者等に対し勧告がされた、同法第2条第2項に規定する特定空家等の敷地の用に供されている土地
ここが誤解されやすいところです。「空き家にすると固定資産税が6倍になる」という言い方が広まっていますが、条文が線を引いているのは勧告を受けたかどうかです。手入れをして、草木を刈り、屋根や外壁が傷んだら直している空き家は、何年空いていても住宅用地特例の対象のままです。
2. 住宅用地特例とは|200㎡以下は6分の1
住宅用地特例とは、人の居住の用に供する家屋の敷地について、固定資産税と都市計画税の課税標準を引き下げる制度です。住宅が建っている土地の税負担を軽くするためのもので、地方税法第349条の3の2と第702条の3に定めがあります。
| 区分 | 面積 | 固定資産税の課税標準 | 都市計画税の課税標準 |
|---|---|---|---|
| 小規模住宅用地 | 住戸1戸あたり200㎡以下の部分 | 価格の6分の1 | 価格の3分の1 |
| 一般住宅用地 | 200㎡を超える部分 | 価格の3分の1 | 価格の3分の2 |
| 勧告を受けた管理不全空家等・特定空家等の敷地 | ― | 特例なし(価格のまま) | 特例なし(価格のまま) |
東京をはじめ一都三県の住宅地では、土地の評価額が家屋の評価額を大きく上回ることが珍しくありません。だからこそ、土地側の特例が外れる影響が大きくなります。
3. 管理不全空家等とは|指導から勧告までの流れ
管理不全空家等とは、空家法第13条第1項の定義によれば、「空家等が適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認めるとき」の、その空家等をいいます。2023年12月13日に施行された改正で新しく設けられた区分です。
条文が定めている流れは2段階です。
- 手順1 指導(第13条第1項)。市町村長は、管理不全空家等の所有者等に対し、特定空家等になることを防ぐために必要な措置をとるよう指導することができます。
- 手順2 勧告(第13条第2項)。指導をしてもなお状態が改善されず、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれが大きいと認めるときに、修繕、立木竹の伐採その他の具体的な措置について勧告することができます。この勧告を受けた時点で、住宅用地特例の対象から外れます。
空家法第5条は、所有者等に「周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努める」ことを求めています。指導が来てから慌てるより、遠方に空き家があるなら、年に数回の見回りや、管理を代行するサービスの利用を先に検討するほうが確実です。
4. 特定空家等とは|命令・行政代執行まで進む場合
特定空家等とは、空家法第2条第2項で次のいずれかの状態にあると認められる空家等とされています。
- そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
管理不全空家等より先の段階で、措置も重くなります。
| 段階 | 内容 | 根拠 | 住宅用地特例 |
|---|---|---|---|
| 助言・指導 | 除却、修繕、立木竹の伐採その他必要な措置をとるよう助言または指導 | 第22条第1項 | 対象のまま |
| 勧告 | 助言・指導をしても改善されないとき、猶予期限を付けて措置を勧告 | 第22条第2項 | 対象から外れる |
| 命令 | 正当な理由なく勧告に従わず、特に必要があると認めるとき、猶予期限を付けて措置を命令。事前に意見書の提出または公開による意見の聴取の機会がある | 第22条第3項〜第8項 | 対象から外れたまま |
| 行政代執行 | 命令に従わないときなどに、市町村が代わって措置を行い、費用を所有者等に請求 | 行政代執行法による | ― |
倒壊の危険がある家に対しては除却まで求められることがありますが、景観や生活環境の問題にとどまる場合は、除却までは求められません。放置の度合いに応じて段階が分かれている、と理解してください。
5. 実際にどれだけ使われているか|措置の実績
国土交通省と総務省は、毎年度、空家法の施行状況を1,741市区町村に対して調査しています。2025年3月31日時点の結果は次のとおりです。
出典:国土交通省・総務省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について」(2025年3月31日時点・調査対象1,741市区町村・2026年9月21日確認)。2023年度は指導を行ったのが63市区町村、2024年度は指導151市区町村・勧告40市区町村。累計は指導3,211件・勧告378件の合計3,589件。管理不全空家等の区分は2023年12月13日に施行されたため、2023年度は約3か月半分の数値です。バーの高さは最大値を100%としています。
勧告378件という数は、全国1,741市区町村に対して決して多くありません。ただし、制度が動き始めた最初の年度の数字であることに注意が必要です。指導は1年で666件から2,545件へと約3.8倍になっており、運用は広がっています。
特定空家等を含めた空家法全体の措置は、1件も措置がなかった年度を含めた累計で48,362件(923市区町村)でした。措置の結果として除却や修繕などがなされた空き家の累計は次のとおりです。
出典:国土交通省・総務省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について」(2025年3月31日時点・2026年9月21日確認)。合計220,030件(前年度までの累計は192,540件)。ここでいう除却や修繕等は、除却、修繕、繁茂した樹木の伐採、改修による利活用、その他適切な管理を指します。バーの高さは最大値を100%としています。
この図が示しているのは、実際に空き家が片づいているきっかけの大半は、法にもとづく措置ではなく、市区町村の相談窓口や補助制度といった支援の側にあるということです。勧告を恐れて動くより、先に自治体の窓口に相談したほうが早い、とも読めます。
6. 「6倍になる」は本当か|計算の前提を確かめる
住宅用地特例が外れると、200㎡以下の部分の課税標準は価格の6分の1から価格そのものに戻ります。課税標準だけを見れば6倍です。ただし、納める税額がそのまま6倍になると言い切ることはできません。理由は3つあります。
- 負担調整措置があります。地方税法には、評価額が急に上がったときに課税標準の上昇をならす仕組みがあり、実際の課税標準額は本来の額より低いことがあります。この場合、特例が外れたときの増え方は6倍に届きません。
- 都市計画税は3倍です。200㎡以下の部分の都市計画税の特例は3分の1なので、外れたときの倍率は3倍です。固定資産税と都市計画税を合わせた実際の負担は、6倍と3倍の中間の増え方になります。
- 家屋の分は変わりません。特例が外れるのは土地の課税標準です。家屋の固定資産税は影響を受けません。
目安として、土地の価格が3,000万円、面積200㎡以下、固定資産税の税率1.4%、都市計画税の税率0.3%という条件で、負担調整措置がなく課税標準が価格どおりに算定されると仮定した場合の単純計算を示します。
| 区分 | 固定資産税の課税標準 | 固定資産税 | 都市計画税の課税標準 | 都市計画税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 住宅用地特例あり | 500万円(6分の1) | 7.0万円 | 1,000万円(3分の1) | 3.0万円 | 10.0万円 |
| 勧告を受けて特例なし | 3,000万円 | 42.0万円 | 3,000万円 | 9.0万円 | 51.0万円 |
| 差 | ― | +35.0万円 | ― | +6.0万円 | +41.0万円(5.1倍) |
もう1点、税額が小さい土地には免税点があります。同一の市町村内で同じ人が所有する土地の課税標準額の合計が30万円未満のときは、固定資産税は課されません(地方税法第351条)。特例が外れることで、この免税点を超えて新たに課税されるようになる場合もあります。

7. 解体して更地にするとどうなるか
「税金が上がる前に解体しよう」と考える方は多いのですが、家屋を解体して更地にすると、その土地は住宅用地ではなくなるため、住宅用地特例は同じように外れます。勧告を受けた場合と、更地にした場合とで、土地の課税標準の扱いは変わりません。
| 選択肢 | 土地の住宅用地特例 | 家屋の固定資産税 | 主な費用・手間 |
|---|---|---|---|
| 手入れをして空き家のまま持つ | 対象のまま | かかる | 見回り・草木の管理・修繕。火災保険の空き家扱いの確認が必要 |
| 放置して勧告を受ける | 外れる | かかる | 命令・行政代執行に進むと、費用を請求される |
| 解体して更地にする | 外れる | かからなくなる | 解体費用。自治体の補助制度がある場合がある |
| 賃貸に出す・売る | 賃貸なら対象のまま | 賃貸ならかかる | 改修費用、仲介の手数料。売却時は譲渡所得の課税を確認 |
| 建て替えて住む・貸す | 対象のまま | かかる(新築の減額措置あり) | 建築費用。接道や再建築の可否の確認が必要 |
相続した実家を売る場合は、一定の要件を満たすと譲渡所得から3,000万円を控除できる特例があります。この特例を使うために市区町村から交付を受ける確認書の件数は、年々増えています。
出典:国土交通省・総務省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について」(2025年3月31日時点・2026年9月21日確認)。制度開始(2016年度)からの累計は93,897件。2017年度7,000件、2019年度9,649件、2021年度11,944件は紙幅の都合で省いています。市区町村からの報告により過年度分の件数が一部修正されています。バーの高さは2024年度を200pxとした比です。
8. 空き家は全国で900万戸|統計から見た全体像
総務省の令和5年住宅・土地統計調査(2023年10月1日現在・2024年9月25日に確報を公表)によると、全国の空き家は900万2千戸、総住宅数に占める空き家率は13.8%で、いずれも過去最多・過去最高でした。2018年の848万9千戸から51万3千戸の増加です。
出典:総務省「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」(2024年9月25日公表・2026年9月21日確認)。空き家総数900万2千戸に占める割合は共同住宅55.9%、一戸建39.1%。一戸建の空き家の80.9%、共同住宅の空き家の78.5%がそれぞれ「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」「賃貸用の空き家」です。バーの高さは最大値を100%としています。
ここで読み取っておきたいのは、一戸建ての空き家の8割が、貸すためでも売るためでも別荘でもない空き家だという点です。全国で見ると285万1千戸あります。相続したまま、使いみちを決めかねている家が、この区分に集まっていると考えられます。空き家全体のうち、この区分は385万6千戸(総住宅数の5.9%)です。
なお、東京都は住宅に占める共同住宅の割合が71.6%と全国で最も高い都道府県です。東京23区では集合住宅の空き住戸が目立ちますが、一都三県の郊外に行くほど、管理が難しい一戸建ての空き家の割合が高くなります。実家が首都圏の郊外にあるという方は、本記事の内容がそのまま当てはまります。
9. 遠方の空き家を任せられる相手|空家等管理活用支援法人と2026年9月の改正
空家等管理活用支援法人とは、空き家の管理や活用に関する業務を適正かつ確実に行うことができると認められる法人として、市町村長が申請にもとづいて指定する法人です(空家法第23条第1項)。2023年12月13日に施行された改正で設けられた制度で、2025年3月31日時点で64市区町村が95法人を指定しています。指定に向けて検討中の市区町村は98あり、120法人が候補にあがっています。
支援法人が行う業務は、空家法第24条に6つ定められています。
- 空き家の所有者等に対する、管理または活用の方法に関する情報の提供・相談その他必要な援助
- 委託にもとづく、定期的な空き家の状態の確認、活用のために行う改修その他の管理・活用に必要な事業または事務
- 委託にもとづく、空き家の所有者等の探索
- 空き家の管理・活用に関する調査研究
- 空き家の管理・活用に関する普及啓発
- そのほか、空き家の管理・活用を図るために必要な事業または事務
2026年9月3日の改正で、指定できる法人の範囲が広がりました
この支援法人の制度が、2026年9月3日に改正されました。第16次地方分権一括法(地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律・令和8年法律第27号。2026年5月27日成立、6月3日公布)によるもので、今回の一括法による空家法の改正は、この第23条第1項の1点だけです。地方公共団体から出された制度改正の提案を受けた規制緩和で、内閣府が「令和7年の地方からの提案等に関する対応方針」(2025年12月23日閣議決定)を踏まえて取りまとめた11事項・17法律の改正のうちの1つにあたります。
| 支援法人に指定できる法人 | 2026年9月2日まで | 2026年9月3日から |
|---|---|---|
| 特定非営利活動法人(NPO法人) | 指定できる | 指定できる |
| 一般社団法人・一般財団法人 | 指定できる | 指定できる |
| その他の営利を目的としない法人 | 対象外 | 指定できる(今回の改正で追加) |
| 空家等の管理または活用を図る活動を行うことを目的とする会社 | 指定できる | 指定できる |
内閣府の資料では、加わる法人の例として商工会議所・商工会が挙げられています。商工会議所は商工会議所法にもとづいて設立される法人で、NPO法人・一般社団法人・一般財団法人のいずれにも当たらないため、これまでは空き家の管理や活用に取り組む意欲があっても支援法人になれませんでした。地域の事業者とのつながりを持つ団体が、市区町村の空き家対策を補完する担い手になれるようにする、というのが改正のねらいです。内閣府は改正の効果を「効果的・効率的な空家等対策の推進を通じた地域振興等の実現に寄与」と説明しています。
所有者にとっての意味は、遠方の空き家を任せられる相手の選択肢が増える方向に制度が動いているということです。ただし、支援法人になるには市町村長の指定が必要で、指定は市区町村ごとに進めるものです。改正が施行されたからといって、すぐにお住まいの地域で指定される法人が増えるわけではありません。実家のある市区町村に支援法人が指定されているかどうかは、空き家の担当課にお尋ねください。指定された法人の名称・住所は、市町村長が公示することになっています(第23条第2項)。
10. 相続した実家でまず確認する5つのこと
相続で実家を引き継いだとき、税や制度の話に入る前に確かめておきたいことを5つに絞ります。
- 手順1 登記の名義を確認する。2024年4月1日から相続登記が義務になりました。名義が祖父母のままだと、売ることも貸すことも担保に入れることもできません。空家法の指導・勧告の宛先も所有者等です。
- 手順2 納税通知書と課税明細書を見る。毎年4月から6月ごろに届きます。土地と家屋それぞれの評価額、課税標準額、住宅用地特例が適用されているかどうかが書かれています。特例が効いている状態の税額を知っておくと、外れたときの差が具体的に見えます。
- 手順3 現地の状態を写真で記録する。屋根・外壁・雨どい・塀・庭木・郵便受けを撮っておきます。指導が来たときに、どこを直せばよいかの出発点になります。
- 手順4 火災保険の扱いを確認する。人が住まなくなると、契約の区分が変わったり、補償の対象外になったりすることがあります。保険会社への連絡を忘れないでください。
- 手順5 市区町村の空き家の相談窓口に連絡する。図2で見たとおり、実際に空き家が片づいているきっかけの大半は、法の措置ではなく自治体の支援です。空き家バンク、解体や改修の補助、管理の代行の紹介など、使える制度は市区町村ごとに異なります。

11. 空き家の固定資産税のよくある質問
Q空き家にして何年たつと固定資産税が上がりますか?
A年数では決まりません。地方税法第349条の3の2第1項が住宅用地特例の対象から外しているのは、空家法第13条第2項または第22条第2項にもとづく勧告を受けた管理不全空家等・特定空家等の敷地です。何年空いていても、適切に管理されていて勧告を受けていなければ、特例は外れません。逆に、空き家になって間もなくても、倒壊のおそれがあるなど状態が悪ければ、手続きが進むことはあります。
Q「管理不全空家」と「特定空家」はどう違いますか?
A段階が違います。特定空家等は、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれ、著しく衛生上有害となるおそれ、著しく景観を損なっている状態などにある空家等です(空家法第2条第2項)。管理不全空家等は、その手前の段階で、適切な管理が行われていないことにより「そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態」にあるものです(同法第13条第1項)。2023年12月13日の改正で、この手前の段階でも指導・勧告ができるようになりました。どちらも勧告を受けると住宅用地特例が外れます。
Qいきなり勧告が届くことはありますか?
A条文上、勧告の前には必ず指導(管理不全空家等・第13条第1項)または助言・指導(特定空家等・第22条第1項)があります。勧告ができるのは、指導や助言をしてもなお状態が改善されないと認めるときです。したがって、指導や助言の連絡を受け取った段階で草木を刈る、破損した箇所を直すといった対応をすれば、住宅用地特例が外れる事態は避けられます。連絡を受け取ったら、まず市区町村の担当課に、どの状態を改めればよいかを確認してください。
Q固定資産税は本当に6倍になりますか?
A6倍になるのは、200㎡以下の部分の固定資産税の「課税標準」です。納める税額がそのまま6倍になるとは限りません。負担調整措置により実際の課税標準額が本来の額より低い場合は増え方が小さくなりますし、都市計画税の特例は3分の1なので、外れたときの倍率は3倍です。家屋にかかる固定資産税は変わりません。実際の金額は、お手元の課税明細書に載っている土地の価格・課税標準額と、市区町村の税率から計算できます。
Q解体して更地にすれば税金は安くなりますか?
A土地の固定資産税は安くなりません。住宅用地特例は「人の居住の用に供する家屋の敷地」に適用されるため、家屋を解体すると土地は住宅用地ではなくなり、特例は同じように外れます。一方で、家屋にかかっていた固定資産税はなくなり、倒壊や不法侵入のリスクも解消します。解体費用と、その後の土地の使いみち(売る・貸す・建て替える)を合わせて考えてください。市区町村によっては解体費用の補助や、解体後の土地の減免制度を設けている場合があります。
Q遠方に住んでいて管理に行けません。どうすればよいですか?
A選択肢は3つあります。1つ目は、空き家の管理を代行するサービスを使うことです。2023年12月13日の改正で、市区町村が空家等管理活用支援法人を指定できる制度が設けられ、2025年3月31日時点で64市区町村が95法人を指定しています。2026年9月3日の改正では、この支援法人に指定できる法人に「その他の営利を目的としない法人」が加わりました(第16次地方分権一括法・令和8年法律第27号)。内閣府の資料では商工会議所・商工会が例に挙げられています。2つ目は、貸すか売るかを決めて手放すことです。3つ目は、市区町村の空き家バンクに登録することです。いずれにしても、所有者等として適切な管理に努める責務が空家法第5条に定められていますので、「行けないから何もしない」という状態は避けてください。

12. まとめ|押さえておきたい7点
- 空き家の固定資産税が上がるのは、市町村長から勧告を受けたときです。管理不全空家等の勧告(空家法第13条第2項)、特定空家等の勧告(同法第22条第2項)のいずれかを受けた土地が、住宅用地特例の対象から外れます(地方税法第349条の3の2第1項)。
- 住宅用地特例は、200㎡以下の部分が固定資産税の課税標準の6分の1・都市計画税の3分の1、200㎡を超える部分が3分の1・3分の2です。外れると課税標準は価格そのものに戻ります。
- 勧告の前には必ず指導または助言・指導があります。その段階で草木を刈る、傷んだ箇所を直すといった対応をすれば、特例が外れることはありません。
- 2024年度の管理不全空家等への措置は、指導2,545件・勧告378件でした(2025年3月31日時点・調査対象1,741市区町村)。指導は前年度の666件から約3.8倍に増えています。
- 解体して更地にしても、土地の住宅用地特例は同じように外れます。家屋分の税はなくなりますが、解体費用と土地の使いみちを合わせて判断してください。
- 空き家は全国で900万2千戸、空き家率13.8%で過去最高です。一戸建ての空き家352万3千戸のうち80.9%が、貸すためでも売るためでも別荘でもない空き家でした。実際に空き家が片づいたきっかけの大半は、法の措置ではなく市区町村の支援です。まず窓口に相談してください。
- 2026年9月3日に空家法の第23条第1項が改正され、空家等管理活用支援法人に指定できる法人に「その他の営利を目的としない法人」(内閣府の例示では商工会議所・商工会など)が加わりました。遠方の空き家を任せられる相手の選択肢が増える方向の改正です。ただし指定は市区町村ごとの判断ですので、実家のある市区町村の空き家の担当課にご確認ください。
相続した東京・一都三県の実家について、貸す・売る・建て替えるのご相談を承ります。
自由住宅では、空き家になった戸建てをお持ちの方に、現況の調査、接道や再建築の可否の確認、周辺の取引事例をふまえた価格の見立て、リフォームして貸す場合と解体して売る場合の比較を、資料を使ってご説明しています。遠方にお住まいで現地に行けない方のご相談も承ります。税額そのものの判断は税理士の業務ですので当社では行いませんが、必要に応じて提携する税理士法人をご紹介します。
空き家になった実家のご相談はこちら出典一覧
- e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」第2条・第5条・第13条・第14条・第22条・第23条・第24条・第27条・第28条(平成26年=2014年法律第127号/最終改正 令和8年=2026年法律第27号・2026年9月21日確認)
https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC1000000127 - e-Gov法令検索「地方税法」第349条の3の2・第350条・第351条・第702条の3・第702条の4(昭和25年=1950年法律第226号・2026年9月21日確認)
https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226 - 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」(最終更新2026年9月3日・2026年9月21日確認。下記の施行状況調査とガイドラインの掲載元ページ)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html - 国土交通省・総務省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について」(2025年=令和7年3月31日時点・調査対象1,741市区町村・2026年9月21日確認)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001984996.pdf - 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年=2023年法律第50号)について」(2023年12月13日施行・2026年9月21日確認)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000138.html - 国土交通省「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)」(最終改正2026年9月3日・2026年9月21日確認)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001712338.pdf - 内閣府「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(令和8年=2026年法律第27号)(第16次地方分権一括法)の概要」(2026年5月27日成立・6月3日公布・2026年9月21日確認)
https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/ikkatsu/doc/16ikkatsu/gaiyou_koufu.pdf - 内閣府 地方分権改革「第16次一括法などの施行」(上記の概要資料の掲載元ページ・2026年9月21日確認)
https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/ikkatsu/16ikkatsu/16ikkatsu.html - 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」(2024年=令和6年9月25日公表・2026年9月21日確認)
https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/tyousake.html - 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要」(2024年9月25日公表・2026年9月21日確認。上記ページに掲載)
https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/pdf/kihon_gaiyou.pdf - 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(2026年9月21日確認)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
本記事は2026年9月21日時点で公表されている情報にもとづいています。固定資産税・都市計画税の税率、負担調整措置、減免や補助の制度は市区町村によって異なります。空家法の措置の判断も市町村長が個別に行うものです。ご自身の土地の税額と使える制度は、納税通知書・課税明細書と、建築地の市区町村の窓口でご確認ください。税額の計算や特例の適用についての個別具体的な判断は、税理士法により税理士・税理士法人の業務とされており、当社は行いません。