取引態様とは、不動産会社がその取引で、自分が契約の当事者(売主)なのか、売主の代理人なのか、売主と買主の間に入る媒介(仲介)なのかを示す区分です。宅地建物取引業法第34条が、この3つの区分を「取引態様の別」と呼んでいます。同じ新築一戸建てでも、どの立場の会社と話しているかで、契約の相手と支払う費用、法律上の保護の中身が変わります。
| 取引態様 | 会社の立場 | 売買契約の相手 | 報酬に関する法律上の扱い |
|---|---|---|---|
| 売主 | 会社が自ら売主となる | その会社 | 法第46条の報酬の上限は「代理又は媒介に関して受ける報酬」の定めで、自ら売主となる取引は対象外 |
| 代理 | 売主に代わって契約を成立させる | 売主 | 代理の依頼者と、売買の相手方から受ける報酬の合計が、媒介の上限額の2倍以内 |
| 媒介(仲介) | 売主と買主の間に入り、契約の成立をあっせんする | 売主 | 依頼者のそれぞれ一方から、告示の上限額まで |
※取引態様の3区分は宅地建物取引業法第34条、報酬の上限は同法第46条と国土交通省告示(昭和45年建設省告示第1552号)・国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」による。「会社の立場」は編集部の補足です。
売買契約の相手は、仲介でも代理でも「売主」です。仲介会社は契約の当事者ではないため、新築一戸建ての契約で責任を負う相手が誰なのかは、取引態様と売主の名称を合わせて確かめます。
広告の取引態様は、「売主」「貸主」「代理」「媒介(仲介)」のいずれかの言葉で書くことが、不動産の表示に関する公正競争規約の施行規則で決められています。規約の必要な表示事項にも「広告主の取引態様」が入っており、事実と違う表示や、実際より有利だと誤認させる表示は、規約第23条第1号で禁止されています。
| 場面 | 決まり | 買主が確かめること |
|---|---|---|
| 広告を見るとき | 広告をするときは取引態様の別を明示する(宅建業法第34条第1項)。表示は「売主」「代理」「媒介(仲介)」の言葉を使う(規約施行規則第9条) | 広告の取引態様の欄に、売主・代理・媒介のどれが書かれているか |
| 問い合わせ・注文のとき | 注文を受けたときは、遅滞なく、注文をした者に取引態様の別を明らかにする(同条第2項) | 問い合わせた物件で、相手の会社がどの立場かを質問し、答えを書面かメールで残す |
| 媒介の依頼を受けるとき | 媒介契約を結んだときは、報酬に関する事項を記載した書面を交付する(第34条の2、解釈・運用の考え方) | 報酬の額と、支払う時期が書面に書かれているか |
※出典:宅地建物取引業法第34条・第34条の2、不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則(不動産公正取引協議会連合会)、国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」。
売主の会社と、広告を出している会社が同じとは限りません。複数の会社が1つの物件を扱うことがあるため、「広告を出している会社は媒介(仲介)で、売主は別の会社」という場合があります。売主の名称は、広告と、契約前の重要事項説明の書面の両方で確かめます。
自ら売主となる売買の決まりとは、宅地建物取引業法が、宅地建物取引業者(不動産会社)が自ら売主になる売買に限って、買主に不利な内容を制限している規定です。仲介会社が間に入る場合も、売主が宅地建物取引業者であれば、売主についてこの規定が働きます。売主が宅地建物取引業者でない場合(個人の売主など)は、この規定の対象外です。
| 項目 | 決まりの内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 手付の額 | 代金の2割(10分の2)を超える手付は受け取れない。手付を受け取ったあとは、相手が履行に着手する前なら、買主は手付を放棄して、売主はその倍額を現実に提供して、契約を解除できる | 第39条 |
| 契約不適合の通知期間 | 契約の内容に適合しない(契約不適合)ことを売主に通知できる期間について、引渡しの日から2年以上となる特約を除き、民法より買主に不利な特約をしてはならない。反する特約は無効 | 第40条 |
| クーリング・オフ | 売主の事務所等以外の場所で申込みや契約をしたなど、場所や方法の条件を満たすとき、書面で申込みの撤回や契約の解除ができる。撤回できると告げられた日から8日を過ぎたとき、または引渡しを受けて代金の全部を支払ったときは、できない | 第37条の2 |
| 手付金等の保全 | 工事の完了前の物件は代金の5%を超えるとき、完成した物件は代金の10%を超えるとき、またはどちらも1,000万円を超えるときは、保証や保険などの措置をとってからでないと手付金等を受け取れない。措置がないとき、買主は手付金等を支払わないことができる | 第41条・第41条の2、施行令第3条の5 |
※出典:宅地建物取引業法第37条の2・第39条〜第41条の2、同法施行令第3条の5(e-Gov法令検索)。「事務所等」には、売主の事務所のほか、専任の宅地建物取引士を置く分譲の案内所なども含まれ、買主が自宅や勤務先での説明を希望した場合のその場所も含まれます(同法施行規則第16条の5)。
出典:宅地建物取引業法第39条・第41条・第41条の2(e-Gov法令検索)。代金4,000万円に各割合を乗じた編集部計算
代金4,000万円の新築一戸建てなら、手付の上限は800万円です。手付金等(代金に充てる手付金などで、引渡し前に支払うもの)が、工事完了前の物件で200万円、完成した物件で400万円を超えるときは、保全措置が必要です。1,000万円を超えるときも、保全措置が必要です。手付の上限は「払ってよい額」ではなく、会社が受け取れる額の上限です。実際の額は売買契約書で確かめます。
これらの決まりは、売主が宅地建物取引業者のときの話です。宅地建物取引業者どうしの取引(会社が買主になる場合など)には、同法第78条第2項により、これらの規定は適用されません。一般の個人の買主が、会社から新築一戸建てを買う場合は対象になります。
新築住宅の売主の瑕疵担保責任とは、新築住宅の売買で、売主が引渡しから10年間、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分の瑕疵について負う責任です。住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)第95条が定めており、買主に不利な特約は無効です。「瑕疵」とは、この法律では、種類または品質に関して契約の内容に適合しない状態をいいます。
この責任は、仲介会社が間に入っても売主が負います。取引態様が媒介(仲介)のときは、責任を負う相手が仲介会社ではなく売主であることを、契約前に確かめます。
| 契約の型 | 10年の責任を負う人 | 責任の根拠 | 資力確保の義務 |
|---|---|---|---|
| 新築の売買(建売住宅など) | 売主 | 品確法第95条 | 宅地建物取引業者が自ら売主となるときは、保険に入るか保証金を供託する(住宅瑕疵担保履行法第11条) |
| 新築の請負(注文住宅) | 請負人 | 品確法第94条 | 建設業者が、保険に入るか保証金を供託する(住宅瑕疵担保履行法第3条) |
※出典:住宅の品質確保の促進等に関する法律第94条・第95条、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住宅瑕疵担保履行法)第3条・第11条(e-Gov法令検索)。売買と請負の契約の型の違いは、建売と注文の中間の家とはで解説しています。
保険に入っている場合、売主が相当の期間を過ぎても責任を果たさないときは、買主が保険の引受け先に直接、損害のてん補を請求できる仕組みです。住宅販売瑕疵担保責任保険契約は、保険金額が2,000万円以上で、引渡しを受けた時から10年以上有効であることが要件とされています(住宅瑕疵担保履行法第2条第7項)。保証金の供託を選ぶ場合は、毎年3月31日の基準日ごとに、過去10年間に引き渡した新築住宅のうち、保険に入っていない分の保証金を供託しておかなければなりません。
仲介手数料とは、売買の媒介(仲介)を依頼した人が、媒介した不動産会社に払う報酬のことです。法律上の上限は、宅地建物取引業法第46条にもとづく国土交通大臣の告示で決まっています。計算の基礎になる代金のうち200万円以下の部分に5.5%、200万円を超え400万円以下の部分に4.4%、400万円を超える部分に3.3%をそれぞれ乗じて合計した額で、いずれも消費税を含む(税込)料率です。
400万円を超える代金なら、合計額は「代金×3.3%+6.6万円」(税込)で計算できます。たとえば計算の基礎になる代金が4,000万円なら、上限は4,000万円×3.3%+6.6万円=138.6万円(税込)です。
出典:国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」(令和6年6月公布・7月1日施行)の税込料率5.5%・4.4%・3.3%から編集部計算
| 計算の基礎になる代金の区分 | 媒介の料率(税込) | 代理の料率(税込) |
|---|---|---|
| 200万円以下の部分 | 5.5% | 11% |
| 200万円超400万円以下の部分 | 4.4% | 8.8% |
| 400万円を超える部分 | 3.3% | 6.6% |
※出典:国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」、同「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」第46条第1項関係。代理の料率は媒介の2倍(代理の依頼者と相手方から受ける額の合計の上限)。消費税の課税事業者の場合の税込の料率です。
上限額は、当然に請求できる額ではありません。国土交通省の「解釈・運用の考え方」は、報酬の限度額を当然に請求できるものではなく、具体的な額は、会社が行う媒介業務の内容などを考慮して、依頼者と協議して決めるものとしています。また、売買では、依頼者の双方から報酬を受ける場合も、一方のみから受ける場合も、依頼者のそれぞれ一方から受ける額が上限以下でなければなりません。
告示は、報酬の計算の基礎になる代金の額から、消費税額と地方消費税額に相当する額を除くと定めています。図2は、計算の基礎になる代金を3,000万〜7,000万円とした場合の上限額です。新築では、売買代金に建物の消費税が含まれるため、売買代金の表示額と計算の基礎になる代金は一致しません。実際の計算の基礎になる金額は、媒介する会社に書面で確かめましょう。媒介契約を結ぶときは、報酬に関する事項(消費税等相当額を含む)を書面に記載することが決められており、事前に上限の範囲内で報酬額の説明を受け、合意する必要があります。
契約前の確認とは、取引態様ごとに変わる、相手・費用・責任の3点を、口頭ではなく書面で確かめることです。次の表は、この記事で取り上げた決まりを、確認の項目にまとめたものです。
| 確認する項目 | 確かめる書面・場所 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 1. 取引態様 | 広告、問い合わせへの回答 | 売主・代理・媒介のどれか。広告を出した会社と問い合わせ先の会社が違うときは、それぞれの取引態様を確かめる |
| 2. 売主の名称と免許 | 重要事項説明書、国土交通省の宅建業者の検索システム | 売主の商号と免許番号。仲介会社と売主が別のときは、売主の会社も確かめる |
| 3. 手付の額と保全 | 売買契約書、重要事項説明書 | 手付が代金の2割以内か。手付金等が保全の基準を超えるとき、保証・保険などの措置があるか |
| 4. 通知期間と資力確保 | 売買契約書、保険証券や供託の説明書面 | 契約不適合を売主に通知できる期間を、引渡しから2年以上とする特約があるか。新築住宅の10年の責任に対する、保険か供託の別 |
| 5. 報酬の額と支払う時期 | 媒介契約書面 | 上限の範囲内か。消費税等相当額を含む額か。支払う時期はいつか |
自由住宅は、土地と建物をまとめて購入する分譲住宅(セミオーダー型)を扱っています(自由住宅「よくある質問」)。個別の物件の取引態様は、広告と契約前の書面でご確認ください。建売と注文の費用の組み立ては「建売と注文の中間の家の総額はどう決まる?」、会社を公的な記録で確かめる手順は「分譲地の区画はどう決まる?」で解説しています。
宅地建物取引業者の免許は、国土交通省の「建設産業・不動産業 企業情報検索システム」で確かめられます。商号や免許番号を入れて、免許の有無と有効期間を見ます。相談を始める時期の目安は「家を買う相談はいつ始める?」にまとめました。
新築一戸建てを買うときは、まず「相手が売主か、仲介か」を確かめます。取引態様は、広告に明示する義務があり(宅地建物取引業法第34条)、売主・代理・媒介の違いで、契約の相手と報酬の扱いが変わります。
会社が自ら売主となるときは、手付の上限・契約不適合の通知期間・手付金等の保全・クーリング・オフの決まりがあり、新築住宅には引渡しから10年の責任と資力確保の義務が加わります。仲介のときは、売主が別にいること、仲介手数料の上限が告示で決まっていて当然に請求できる額ではないことを押さえます。契約前に、取引態様・売主・手付・責任・報酬を書面で確かめると、比べるときの軸になります。
Q売主・代理・媒介(仲介)の違いは何ですか?
A売主は会社が自ら売る立場、代理は売主に代わって契約を成立させる立場、媒介(仲介)は売主と買主の間に入って契約の成立をあっせんする立場です。売買契約の相手は、代理でも媒介でも売主です(宅地建物取引業法第34条)。
Q新築一戸建てを買うとき、仲介手数料は必ずかかりますか?
A取引態様によって異なります。報酬の上限を定める宅地建物取引業法第46条は、「代理又は媒介に関して受ける報酬」の定めです。会社が自ら売主となる取引は、この定めの対象ではありません。媒介(仲介)の場合は、媒介契約の書面に報酬の額が書かれているかを確かめます。
Q仲介手数料の上限は、いくらですか?
A計算の基礎になる代金(消費税額等を除く)のうち、200万円以下の部分は5.5%、200万円超400万円以下の部分は4.4%、400万円を超える部分は3.3%(いずれも税込)で、依頼者の一方から受ける額の上限です。計算の基礎になる代金が4,000万円なら138.6万円(税込)です。上限は当然に請求できる額ではなく、依頼者と協議して決めます(国土交通省)。
Q手付金は、いくらまで払えばよいのですか?
A会社が自ら売主となる場合、手付の額は代金の2割が上限です(宅地建物取引業法第39条)。代金4,000万円なら上限は800万円です。実際の額は契約で決まるため、売買契約書で確かめます。手付金等が保全の基準を超えるときは、保証や保険などの措置が必要です。
Q契約したあとでも、クーリング・オフはできますか?
A会社が自ら売主で、売主の事務所等以外の場所で申込みや契約をしたときは、できる場合があります。撤回できると告げられた日から8日を過ぎたとき、または物件の引渡しを受けて代金の全部を支払ったときは、できません(第37条の2)。売主の事務所や、専任の宅地建物取引士を置く分譲の案内所で申込みをした場合は、対象外です。
Q新築住宅の10年の責任は、仲介会社が負うのですか?
Aいいえ、売主が負います。品確法第95条は、新築住宅の売主が、引渡しから10年間、構造耐力上主要な部分などの瑕疵について責任を負うと定めています。会社が自ら売主となる新築住宅では、保険の加入か保証金の供託による資力確保も義務づけられています(住宅瑕疵担保履行法第11条)。
この記事は、宅地建物取引業法などの法令と国土交通省の公表資料をもとに、一般的な制度の内容を整理したものです。個別の取引の判断は、契約書や重要事項説明書の内容によります。この記事の写真はイメージ(AI生成)で、実在の住宅ではありません。
※料率・上限額は、消費税の課税事業者の場合の税込の額です。図1・図2の数値は、法令の割合や料率を代金に乗じた編集部計算で、実際の取引の額ではありません。